モーリタニアを旅する⑥ 砂漠の中の世界遺産の町「シンゲッティ」〜絶景のサハラ砂漠ウォーク〜

2019年5月6日、天気晴れ。

モーリタニアの歩き方

海沿いの街ヌアディブからほぼ2日かけてやってきた町「シンゲッティ」でむかえた朝。驚いたのは8時に外へ出るともうすでに太陽がギラギラしてること!まだ朝ごはんも食べてないのにここまで暑いかと。寒いのより暑い方が好きなのでいいのですが、今日は結論からいうとものすごーく日焼けをする一日となりました。今も肩が痛いです。

今回のシンゲッティ滞在でお世話になることにしたのはこちらAUBERGE ZARGA。1泊900円、夕飯は750円でつけることができます。昨日の夜はラクダ肉のタジンをいただきました。料理は全てオーナーのおじさんが作ってくれます。そしてこのオーナーさんはなんと大阪に住んでいたことがあるらしく、そのためホテルの壁面にはひらがなとカタカナが書かれているんです。この文字を見てもう宿泊を即決でした!今日はココを起点に動きます。

とその前にまずは洗濯を。昨日砂まみれになったジャケットや寝袋、さらにはバックパックまで思い切って洗うことにしました。まぁそんでもってすぐ乾くから笑っちゃいます。どんだけ暑いんだ!!と、思わずつっこみたくなるそんなガッツリ快晴の本日。午前中はシンゲッティの町を散策してきました。

③シンゲッティ

シンゲッティは、モーリタニア北部のクサールと呼ばれる古い交易拠点の一つである。首都ヌアクショットから北東へ約450kmのアドラール台地にあり、観光拠点は西方のアタールである。13世紀にサハラ交易ルート上の拠点として建造されたこの小さな町は、エキゾチックな風景や歴史ある手稿の宝庫に驚嘆する人々を惹きつけ続けてきた。しかし、近年は砂漠の侵食に深刻に脅かされており、高い砂丘が西部の境界を形成し、いくつかの家は打ち寄せる砂に呑みこまれた。【Wikipediaより】

モロッコで初めて見たサハラ砂漠は、全体のほんのわずか一部だったことを改めて感じるモーリタニアの旅。どこに行っても砂漠。国土の90%が砂漠というモーリタニアを旅していると、世界一大きい砂漠の大きさが私の想像をはるかに超えていたことを強く実感します。

モーリタニアはアフリカ大陸の西に位置する国ですが、東のエジプトやスーダンの方まで永遠と続くサハラ砂漠。アフリカ北部の人々の生活が砂漠と共にあるということをこの旅の中で知りました。そんな中でもここシンゲッティはまさに砂漠の中に人々の生活の場所があり、暮らしを営む様子が見られる町です。

モロッコのメルズーガにも人々の生活と砂漠が共にありましたが、どちらかというと砂漠のとなりで暮らすという感じかなと。シンゲッティは町そのものがもう砂漠!通りを歩いていても砂漠。すぐそこは砂漠。砂漠の中で暮らしているということがどこを見ても感じられる町です。

通りには石やレンガを積み重ねてできた家々がならびます。歩いていると子どもたちから「ボンジュール」とたくさん声をかけられました。

世界遺産「ウアダン、シンゲッティ、ティシット、ウアラタの古いクサール」

そしてこのシンゲッティの町で特に有名なのが、同じく石で造られたこちらのモスクです。モスクには必ずある塔(ミナレット)ですが、こちらも先ほどの家々と同じような石を重ねてできており、そのてっぺんにはダチョウの卵の飾り(かざり)がついているという面白いデザインになっています。

この町はモーリタニアの真ん中に位置するために、昔は商売や流通の中心地として非常に栄えていたそうです。歴史的にも重要な意味をもつシンゲッティの町は周辺地域と併せて『ウアダン、シンゲッティ、ティシット、ウアラタの古いクサール』として世界遺産に登録されています。

町の中には歴史的な図書館もあり、大変貴重な資料が今もしっかりと保管されているとのこと。中に入って閲覧(えつらん)することはできないようなので場所だけ見ておしまいです。

中学校の地理で習った「砂漠化」という言葉。サハラ砂漠は今もなお少しずつですがその範囲を広げているんです、実は。このシンゲッティの町を歩いていると所々で緑にも出会います。砂漠の中の緑というのはなかなか不思議な光景ですが、これはかつて流れていた川の名残とのこと。

その昔はいろいろな種類の動物も生息する緑豊かな地域だったようです。が、現在はこの通り一面に広がるサハラ砂漠。動物も乾燥地帯で生きのびることのできるラクダとヤギしか見かけません。

砂漠に飲みこまれた家もあちこちにありました。砂漠の底知れないチカラを見せつけられると同時に、大地の底に流れる水を頼りに今日も砂漠で生きる植物たちの生命を強く感じるのでした。

それにしてもこの町の人たちは本当によく声をかけてくれるんです。大人はお店の物を買わないか~という感じですが、小さい子たちは挨拶(あいさつ)をしてくれるのがうれしくてたまりません。「ボンジュール」だけでなく、「あなたは英語を話しますか?」とわざわざ聞いてから「ハロー」と声をかけてくれる子もいるのにはビックリでした。やはり挨拶は心が温かくなる魔法の言葉です。

サハラ砂漠ウォーク

午前中は町の中を散策しましたが、午後は近くの村まで歩いてみることにしました。ポルトガルから来たアンドレと今日は丸一日行動を共にしています。暑くて疲れていても、そこに美しい砂漠と、いっしょに行動をしてくれる仲間がいると自然と元気が湧(わ)いてきます。まぁそれにしても歩き出してすぐにわかりました。

何度も書きますがサハラ砂漠は大きいです!砂に足をとられるので歩きづらく、そしていくら進んでもずーっと続く砂漠に少し心が折れそうになるのが正直なところ。モロッコでは砂漠の移動は全てラクダに乗っていたので、こんなに疲れるものとは知りませんでした。

さらに太陽が本当に暑くてしんどい。でもその分風が吹いた時はたまらなく気持ちいいんです!アンドレが砂丘を登ってショートカットをしようというので私ももちろんついていくことに。小高い丘のてっぺんまでくると

この景色。これが360度です。どこまでーも続くサハラ砂漠にスゲー!の声しか出ませんでした。目の前に広がる自然が創り上げた美しい世界。何よりこのシンゲッティの砂漠の散歩がいいのは、私とアンドレ以外そこに誰もいないことでした。人間の足あとは私たち2人のものだけで、あとはラクダやトカゲ、虫などの生き物の足あとがあるだけです。こんなすごい砂漠を独占(どくせん)するというこの贅沢(ぜいたく)。これは暑さに負けずに自分たちの足で動いたからこそ味わえるものです!この砂漠の景色はたまりませんでした。

砂丘のてっぺんを歩き続けてやって来た隣(となり)の村にもモスクが!砂漠の中にそびえるミナレットはこれまた非常に味のある感じです。モスクの中からはお祈りをする音が聞こえてきました。こんな砂漠の中にも人が住んでいるんです。

さぁでもさすがに暑い。そして砂漠を歩くのは本当に体力がいります。ちなみにここまでおよそ4kmの道のりでしたが、帰りはまたこれを戻ります。アンドレと少し休もうかと話しても休む場所がなく、こうしている間にも太陽が私たちの体力を奪って(うばって)いきます。とにかく冷たい水が飲みたい!!という思いで遠く1km先にある村を目指してまた歩き出します。水を求めて砂漠の中を移動する人々の気持ちが少しだけわかったような気がしました。これは本当にハードです。

残念なことにたどり着いたその村には水はなく。それでもようやく見つけた日かげに座って小休憩。そのあとは太陽のおかげでアツアツのお湯になった残り少ないペットボトルの水を大切に飲みながら来た道を戻り…。あと少しだ!と2人でお互いに励まし合いながら歩き続けてついに宿に到着しました。まるまる4時間の砂漠ウォーキングのあとにたまらず買ったのはコカコーラ!!沁(し)みた〜!!

シャワーを浴びてサッパリして、夕日も眺めてこれにてシンゲッティの1日が終了です。歩いた歩数はなんと3万歩!砂漠を思う存分満喫しました。

さぁ、でもこれで終わらないんです。実は今日からイスラム教の人々にとって非常に大切な期間がスタートしました。夜空にうっすらと姿を見せた月。この5月の月が姿を現してから満月になり、新月となって姿を消すまでの一ヶ月間は「ラマダーン(ラマダン)」と呼ばれる期間になります。今日はその始まりの日。このラマダンは、先日説明したイスラム教の人々(ムスリム)の守るべきことと同様に義務の一つとされています。その内容は

『日の出から日の入りまでものを食べない』

というもの。そして”食べない”と書きましたが、これには”飲まない”も含まれ、飲食を一切しない(断食する)という義務になります。まぁこれだけ聞くとなんだそれはとなりますが、これを守ることによってイスラム教を信じる気持ちや、共に苦しい経験をする仲間との絆が深まるという意味合いがあるようです。さすがに私がこれを今日守っていたら砂漠で倒れていました。観光客や、子どもたち、老人のみなさんや病気の人々はこの断食をしなくてもよいとされています。が、やはり私だけ目の前でものを食べているというのもムスリムのみなさんに申し訳ないので、水だけは飲ませていただき、私も朝ごはんを食べたあとは日没まで何も食べませんでした。…砂漠から帰ってきた際のコカコーラだけは我慢(がまん)できませんでしたがね。飲み物なのでご勘弁を!

こんな体験ができるのもなかなかないことなので、私も一ヶ月間できるかぎりラマダンを経験してみようと思います。ラマダン最初の夜の夕飯ではラクダのミルクも飲ませてもらいましたが、ヨーグルトみたいで飲みやすかったです。そしてチキンタジンが最高!心と体にしみる最高の晩ごはんでした。

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