2019年5月7日、天気晴れ。
モーリタニアの歩き方
昨日の疲労(ひろう)が溜まっていますが、今日はシンゲッティからまた移動です。モーリタニアの国土の広さは、この一週間の移動のたびに強く感じたことでした。改めて地図を見ると、北アフリカのサハラ砂漠を有する国々は他のアフリカ諸国と比べて明らかに国土が大きいことがわかります。今日でモーリタニアの旅も最後になりますが、移動をする時間が長かったというのはこの国を知る上で大切な経験になった気がします。ということでなんと本日の出発は朝4時半!軽い朝食をいただき、辺りは真っ暗な中、車の荷台に乗ってアタールの街までもどります。荷台から見えたうっすらと天の川らしきものも見える満点の夜空から一日が始まります。
そしてここで2日間旅を共にしたアンドレとはお別れです。彼もかなり疲れていたようで、自分が出て行くのにも全く気づかない様子でした。アンドレと話した仕事の話や人生観、その他様々なことはこれまた私にとって大切な学びであり思い出になりました。オブリガード(ポルトガル語で「ありがとう」)!
ラマダン期間中の一日の始まり
日が昇(のぼ)れば明るくなり、日が沈めば暗くなるという知ってて当然のことですが、改めて考えるとそのスケールの大きさを感じさせられるアフリカの夜明け。日本との9時間の時差を認識したり、ラマダン期間の断食の始まりを意識したりすると、”1日”というものがまた面白く感じられるようになってきました。
そして午前6時にアタールに到着。行きは3時間ほどかかりましたが、帰りは山を下るように進んできたのでなんと2時間という驚きの早さでした。そしてついに日の出!ラマダン2日目が始まります。ちなみにお世話になった宿の方に聞くと、ラマダンは初日が一番辛い(つらい)とのことでした。このラマダンの始まりはカレンダーで日付が完璧に決まっているわけではなく、なんとなくここら辺で月が見え始めるだろうという感じでみなさん考えているそうです。
なので宿のオーナーさんはてっきり今日からラマダンが始まると思っていたら、まさかの昨日から!そりゃ一日元気もなくなり残念そうな表情で過ごすはずです。今朝はようやく笑顔がもどってました。私も日中の食事はムスリムの皆さんに倣(なら)って控えていこうと思います。
アタールの街で次の目的地へと向かう車を待つこと1時間。ようやく見つかり乗りこんで、アタールから南へと1時間ほど進んでいきました。するとそこにはこれまでとはちがうモーリタニアの自然の姿が!
見えてきたのはモーリタニアの旅の最後の目的地である④「テルジット(テルジ)」です。
④テルジット
テルジはオアシスで、アタールから南に45 kmのところにあり、モーリタニアの中でも少数の観光客に人気があります。アドラ高原の西端にある峡谷にたたずみ、椰子の木立が泉から流れ出る小川に沿って数百メートル伸びています。【Wikipedia英文和訳より】
着いた瞬間に「ココはどこ!?」と砂漠の国モーリタニアとは別の国に来たような異国の雰囲気(ふんいき)を感じざるをえません。サハラ砂漠の中にヤシの木の緑が映えるその風景に驚かされます。
テルジットには水源があり、所々から湧(わ)く水が緑を育てているようです。まさに砂漠の中のオアシス!モーリタニアのザ・砂漠のイメージとはまた違った景色が広がります。
砂漠のカラカラ感が一気に癒(いや)される流れる水の音や緑のにおい。砂漠地帯で人々がオアシスを求める気持ちがわかったような気がします。熱い太陽の日差しもヤシの木のおかげでさえぎられ、心地よい風だけが感じられるオアシス、テルジット。
が、どこまでも続いているわけではないんです。ヤシの木エリアを抜けるとそこはまた砂漠の世界。ここは岩山に囲まれているので、また少し違った砂漠を感じることができます。
気がついたらがっつり岩山登山をしていました。昨日は砂漠で今日は岩山。日焼けした腕(うで)と足のふくらはぎにまた太陽が照りつけて痛みも感じますが、それでも抑えきることができない登りたい衝動(しょうどう)。面白そうな場所や景色は人を動かすチカラがあります。
ですが、なぜそんなに登ろうとするのか。実は地図アプリで調べるとこの周辺に本物の『オアシス』があるとかかれているんです。観光スポットになっているとの表示もあり、これは見たいぞと思って歩みを進めていたわけなんです。
登る途中でラクダにも出会いました。岩山をラクダが登るというのはなんともスリリングだなと感じながら、まだまだ上を目指します。
さぁ、だいぶ上まで来ました。が、オアシスは見つからず。…もっと上?半信半疑で進むしかありません。この登山にガイドはいません。完全に私一人のみで、まわりには誰もいませんでした。あまり安全とは言い切れないので、登山をする際は日本なら登山届けを出したり、誰かといっしょに登ったりするなどの安全な登山を楽しみましょう。はい、いつの間にかガッツリ登山をしていることに気付いたのでした。でももう引き下がれない!
上の方までやってくるとそこに植物を見つけ、水の存在を近くに感じました。もうすぐだ!
少しひらけた場所も出てきて期待に胸がふくらみます!
GPSを頼りに登り続け、この先20mのとこにオアシスがある所までついに来ました。そして目の前に穴らしきものが!これだ!!最後の力で岩を登り、そしてついに…!!
えー、結局オアシスは見つけられなかったんです。正直後半はうすうす気付きながらも、それでももしかしたら!を期待して登り続けました。が、無かった。オアシスというあるかないかもわからない幻(まぼろし)を追い求めて山のてっぺんまで来てしまうというこれまた貴重な体験ができたということでよしとしたいと思います。上からの景色もまた爽快(そうかい)で、これを見れただけでも感動でした。…強がりです。オアシスで癒されたかった〜。そして当然ですが、帰りは岩山を下ります。
そしてこれはよく知られていることですが、山は上りよりも下りの方がキツイです。特に岩山は両手も使いながら崖下りをするような感覚です。そこに太陽の日差しも加わります。いやー、苦しい!でもこれが生きてるってことなんだなと!ガイドブックに載っている道をたどって美しい景色を眺める旅ももちろん楽しいですが、あてのない旅も面白いもの。手探りで進んだ道のたどり着いた先に広がる景色は自分だけのものになります。かなり大変でしたが無事に下山してテルジットの岩山登山が終了。オアシスで涼み(すずみ)に来たつもりが汗ダラダラになってました。
ラマダン期間中の日中の過ごし方
重い荷物を預かってもらっていた場所にもどると「こっちへ来い!」とヤシの木の屋根でできた涼しいスペースに招待していただきました。ゴザの上に座ったらもう一気に疲れが!そしてそんな自分の様子を見ていた宿を経営するお兄さんがなんと水をくれたんです。もうありがたすぎてメルシー!!喉(のど)がカラカラに乾いていたので本当にたまりませんでした。…ただ、今はラマダン中。いいの?とたずねると「問題ないよ!」という感じでうなずいてくれましたが、ムスリムの皆さんはこの間もずっと飲食をしてないんです。申し訳ありませんが、ありがたく飲ませていただきました。
さぁここからはまたラマダンの話を少し。日中は一切の飲食をしないラマダンの期間ですが、最高気温は温度計で30度近くになるモーリタニアをふくめたアフリカ北部のイスラムの国々。ちなみに、本格的な夏はまだこれからというから驚きです。特にモーリタニアはこれまで旅してきた国の中でも本当に暑い国です。そんな中ラマダンが始まったわけですが、みんなちゃんと生きていけるの?と思いますよね。実はこのラマダンを乗り切る方法があるんです。それが
『何もしない』
これです。水も飲めないので汗を極力かきたくないわけです。なのでどうするかというと、寝てるかゴロゴロしているか!そして、日が傾(かたむ)いて少し気温が下がってきたころから活動をし始めます。日の入りの時間近くになるともう食事の準備はバッチリ整い、あとはモスクからの「日が沈んだよ〜」のアナウンスを待つわけです。そして念願の飲食の時間がやってくる。ラマダン期間は夜に1時間のお祈りの時間もあるそうです。そして、お腹が満たされた状態で楽しく明け方まで起きているといよいよまた日が出てきて断食開始。これを約1ヶ月間となるとすごいなぁとしか言えません。
なのでここで困ったことが!つまりラマダン期間中は日の出ている暑い間はバスやタクシーもあまり走らないんです。ですが、今日はテルジットから首都ヌアクショットまでもどりたい!いっしょにゴザの上で涼んでいた方になんとか思いを伝えると、主要道路まで送ってくれることに!ありがとうございます!!
そのあともまた地元の人に助けを借りて無事にヌアクショットに向かう乗合バスをつかまえることに成功。よかったー!明日からの移動もしっかり考えて動かないといけないなとラマダン期間中の良い勉強になりました。道中ずっと続くサハラ砂漠もこれで見納めかな!?なんて思うと少しさみしい気持ちになりました。バイバイサハラ砂漠!
そして一週間ぶりにヌアクショットにもどってきました!入国する前は本当に心配だったモーリタニアで過ごす一週間でしたが、終わってみると他では経験できない体験の連続で、充実した旅になったなぁと感じています。
ラマダン期間中の一日の終わり
日が沈んだら待ちに待った夕食!空きっ腹に羊の肉が最高に美味しかったです。
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