事件発生 〜スマホとパスポートを盗まれた経緯と反省点〜

2023年6月26日、天気晴れ。

タイトルに書いたとおり、滞在中のニジェールの首都ニアメにて強盗に遭(あ)いました。
いきなりのご報告でご心配をおかけして申し訳ありません。
既に事件からは半年以上が経っていて、命にも別状はなかったことをお伝えさせていただきます。
が、事件発生直後、パニック状態の中で私が取った行動には反省するべき点しかなく・・・
あと一歩間違っていたら正直どうなっていたかわかりません。
言い方は変ですが強盗だけだったらまだよかったんです。
自らの愚行(ぐこう)が引き起こした身の危険を感じた出来事。
恥ずかしながらその一部始終を記します。

はじめに

その前にまず読者のみなさんにわかっておいてほしいことが一つあります。
ハッキリ言ってこのことを記事にするかどうか悩みました。

「強盗にあったのでブログはココで終わります」

というカタチで今回のアフリカ54ヶ国制覇の旅-第9章-の旅の物語を締めくくろうかとも考えました。
ですが、自身の旅の記録としての意味合いも込めて書いている本ブログ。
事件発生直後はただただ落ち込むだけでしたが、あとになってこの出来事から学ぶことが多く、今はこの経験が自分を成長させてくれたと感じています。
このタイトルで記事を挙げるとニジェール及びアフリカを批判したいのか?と思われるかもしれませんが、そのような思いは一切ありません。
私はアフリカが大好きです。
ということで、自分への戒(いまし)めとしてこの記事を書くことを決めました。
『アフリカ=危険』なんてことを主張する意図はなく、むしろこの記事だけを読んでニジェールという国に偏(かたよ)ったイメージを持つことだけは避けて下さい。
悪いのは全て私なので。
では、前置きはここまでです。
ニジェールの首都ニアメで迎えた3日目の朝から話は始まります。

事件発生までの流れ

昨日のニアメ観光を終えて少し街の様子がわかってきたところで、この日はニジェールに来たら絶対に見ておきたかった「ニジェール川」を見に行くことにしました。
もちろんこの街が決して安全とは言い切れないことは理解していたので、お世話になっているホテルHotel Tenereのスタッフさんに周辺の治安について教えてもらいます。
川を見に行くことは可能か?歩いて散策しても大丈夫か?
スタッフさん曰く問題無いとのことでした。

街に沿うようにすぐ隣を流れるアフリカ第3の大河ニジェール川。
ニアメの中心地からはこの川を視認することはできず、本当にそこに川が流れているかはわかりませんが地図で見るとこの通り。
ホテルから2kmほどあるけばそこにニジェール川があります。
川に架(か)かった2本の橋は徒歩でも渡れるとのことだったので、ホテルからグルッと時計回りで一周するルートを歩くことにしました。

Google Mapsより

ゆっくり歩いて20分ほどで橋の上に到着。
これがニジェールで見るニジェール川です。

ニジェール川

ニジェール川は、西アフリカを流れギニア湾に注ぐ河川である。
全長4,180km。
流域面積は209万2,000㎢。
ギニアの山地から北東に流れてマリ共和国に入り、南東に転じてニジェール、ナイジェリアを流れる。
河口に大デルタ地帯を形成しギニア湾に注ぐ。
マリのセグーからトンブクトゥ間に内陸デルタを形成している。
乾燥したサヘル地帯を貫流しており、特に中流域に当たるマリ・ニジェール両国では重要な水源となっている。
また、ギニア湾沿岸地域と北アフリカを結ぶサハラ交易の重要な拠点でもあり、流域ではガーナ王国・マリ帝国・ソンガイ帝国といった国家が興亡を繰り返した。

Wikipediaより
Wikipediaより

お隣の国マリでも見ましたが、やはりその名がついたここニジェールで見ておきたくて。
下を流れるニジェール川を眺めながら橋を歩いて通過します。

Google Mapsより

対岸に来たら主要道路沿いをひたすら真っ直ぐ進みます。
ここも一応ニアメ市内ですが中心地とは違って落ち着いた雰囲気です。
ちなみに橋を渡っている最中は遠くに砂の広がる景色が見えます。
国土の80%をサハラ砂漠が占めるニジェール。
首都ニアメが砂漠地帯を流れる川沿いにつくられた都市であることがよくわかりました。

Google Mapsより

歩き始めて2時間ほど経ったところでお昼休憩。
環状交差点のガソリンスタンドにあったレストランで冷たい飲み物とシャワルマをいただきました。
この日もまぁ暑かったので汗をかいた分だけしっかり栄養補給。
店員さんからポテトのサービスもいただき、居心地の良い店内でしばらくゆっくりしたことを覚えています。
そう、事件はこのあと起こったんです。
それではここまでの反省点をまとめます。

反省ポイント

  • 治安が悪いとわかっている街の一人歩きはやはり避けたほうがよい
    (中心地から離れる場合は特に)
  • 周辺の治安について調べる場合はいろんな人の意見を聞く
    (あとで年配のスタッフさんに話を聞いたら川の対岸は危ないエリアだと言われました)

事件発生①

Google Mapsより

今思うと本当に気が緩んでいたなと感じます。
ニジェール川を見てお昼ご飯も食べたので、あとはもうホテルへ帰るだけ。
今日も楽しく街を散策することができたなぁと思いながら橋を渡ってニアメの中心地へ戻るその途中でした。
人や車の交通量が多く活気のあるケネディ橋。
人目も多いので安全だと判断して最後にニジェール川をiPhone(以下「スマホ」)で写真に収めていたその時でした。
気付いた時にはすぐ後ろにいた青いTシャツを着た男性。
彼の両手がゆっくり伸びて私のスマホをサッと掴(つか)み取ります。
何が起きたかわからず1~2秒経過。
走り去る男の背中が見えてようやく事態を理解しました。


青年海外協力隊に参加した際に学んだことの一つに「無抵抗主義」があります。
自分の身に何か危険なことが起きた場合は何より命を最優先にするというものです。
自分の身を守るために大切なこの教え。
もちろんしっかり理解していたつもりです。
しかし、スマホを取り返さなければということで頭がいっぱいになってしまった私は大きな声を上げて男性を追いかけていました。
無意識にカラダが動いてしまったんです。
今考えると本当に恐ろしいことをしたなと思います。
ですが、この時の私はスマホを取り戻すことに必死で。
そのあと追いかけること数十秒。
無心で走り続けましたが最後は息が切れて足が止まり、男性はそのまま草むらの中へと走り去っていったのでした。


楽しかったニアメ観光から一転。
スマホを盗まれたショックが大きすぎてその場で呆然(ぼうぜん)と立ち尽くします。

「どうしよう・・・」

はい、この時の私はまだ『どうにかなる』という一縷(いちる)の望みを抱いてしまっていたんです。
そしてこの愚(おろ)かすぎる考えが次なる悲劇を生むことになります。

反省ポイント

  • モノを盗まれても絶対に相手を追いかけない!
    (相手が凶器を持っている可能性もあるので刺激するようなことは一切しない)
  • スマホの大事なデータは定期的に保存しておく
    (データが手元にある安心感があると万が一スマホを盗られた場合も幾分か冷静に行動が取れるかと思います)
  • 橋は決して安全な場所ではないことを理解する
    (前後にしか進めず、遠くから行動が読まれやすい橋は事件が起きやすいスポットです)

事件発生②

スマホを盗られたのはニジェール川に架かる橋の上でした。
となると一本道で逃げ場はないはずなのですが、目の前で橋から下へ飛び降りていった男性。
そこは中州が広がっていたんです。
おそらく彼の中でこの逃走ルートは決まっていて、となると私はだいぶ前から狙われていたのだと思います。
橋の上だから安全と油断していました。

彼を追いかけた結果その中州のド真ん中に取り残されることになった私。
先に正解を書いておきます。
大前提としてモノを盗まれても絶対に相手を追いかけないのですが、それでもついカラダが動いてしまった場合に取るべき行動は

『後追いせずにできるだけ早くその場を去る』

これです
盗られたモノへの執着(しゅうちゃく)は捨て、身の安全を確保するためにホテルや警察署などへ行きましょう!
とこの時の私に伝えたい!!
そのあと起きたことを書いていきます。

Google Mapsより

スマホを取り返したかった私は一人中州の探索を継続。

「やっぱりスマホ返すよ!」

なんて青いTシャツの彼が現れるキセキを本気で信じていたんです。
そんなこと起きるわけがないのですがね。
その代わりに現れたのは中州で遊んでいた少年たち。
私の大きな声を聞いて大人の男性も寄ってきました。
英語は全く伝わらないので、拙(つたな)いフランス語でなんとか事情を伝えて彼らに助けを求めてスマホ探しを手伝ってもらいましたが、それでも結局見つかりません。
ここでようやくこれ以上ココにいても仕方がないと判断。
いっしょに探してくれたみなさんに別れを告げて橋の方へ戻ろうとした次の瞬間です。

首を絞(し)められていることに気付くまでには数秒もかかりませんでした。
が、どうしてこんなことになっているかは全くわからず。
背後から裸絞めと呼ばれる技をかける男性。
目の前には私のボディーバックから中身を取ろうと慌てている少年たち。
そしてその様子を見ながら必死にもがく私・・・


アフリカ旅中は常にオンにしている周囲への警戒スイッチ。
それがこの時はスマホを盗られたことに気を取られて完全にオフになっていましたね。
川の真ん中にある中州は本来人が生活するような場所ではありません。
逆に言えばココにいる人たちというのは家がなかったりお金に困っていたりする人なんです。
あとになって思い返すと彼らの身なりはかなりボロボロで、表情もどこか硬かったような気がします。
そこに現れたアジア人観光旅行者。

「お金をくれ」

というお決まりのお願いを彼らにもされたのですがいつも通り軽く受け流したのですが、彼らは本気だったんです。


お金ならいくらでもあげる!
と言いたいのに首を絞められた状態ではそれができません。
腕を外すために抵抗しつつ、ボディーバックのチャックを自ら開けて早くこの状況が終わることを願いました。
そして中身をある程度取ったところで誰かが合図を出したのか彼らは一斉に逃走。
今度は追いかけようなんてこれっぽっちも思いませんでした。

本気で思いっきり絞められた首が痛み、自分の行動の馬鹿さ加減にココロが痛み。
さらに追い打ちをかけるようにそのあとすぐにとんでもないことに気付きます。

「パスポートが無い」

もしかしたら必要かもしれないと思い念のために所持していたパスポートがバックから消えていたんです。
現金やクレジットカードはどうにでもなります。
しかし、パスポートだけはダメです。
スマホだけの被害でとどめることはできたはずなのに・・・
海外では命の次に大事と言われるパスポートまで失い絶望の淵(ふち)に立たされたのでした。

反省ポイント

  • 盗まれたモノは二度と返ってこないということを肝に銘じる
    (キセキは起こりません)
  • パニックになった時こそ冷静になることの大切さを思い出す
    (難しいのは重々承知していますがコレが大事)
Google Mapsより

以上がことの顛末(てんまつ)になります。
こうして振り返ると本当に恥ずかしい限りです。
非は全て自分にあります。
気の緩みと慢心が招いた結果。
事件から半年以上が経過した今だからこそこうして冷静に振り返ることができていますが、この時は目の前の現実にただただ打ちのめされて相当落ち込みました。

慎重な行動の選択の重要性を身をもって学んだ今回の出来事。
とにかく命が助かったことに感謝です。
さぁ、過ぎ去ったことを忘れるつもりはありませんが暗い話はここまでにして少し前向きにこの旅の続きを綴(つづ)っていこうと思います。
アフリカの大地でスマホとパスポートを失い放心状態のところから始まる怒涛(どとう)の物語。
日本大使館が無いニジェールからパスポートが無い状態で一体どのように日本へ帰国したのか!?
是非最後までお付き合い下さい。

「家に帰るまでが遠足です」

DAY368へ続く

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