アルジェリアを旅する③ 世界遺産「ジェミラ」〜山奥に広がる美しい古代ローマ都市とモザイク画〜

2023年6月16日、天気晴れ。

アルジェリアを旅する

現地の旅行会社Fancyellow Travel Servicesのツアーで巡っている今回のアルジェリア旅。
この国の見所を余すところなくギュッと詰めたツアー内容で、一日一日本当に濃い時間を過ごさせていただいています。
もちろんお値段はしますが、ホテルの予約や車&ドライバーの手配など何から何までしてもらえるツアー旅行もこれはこれでイイなと実感。
治安の心配をせずに旅にどっぷり浸れるというのは非常に有難いことですからね!
普段のアフリカ一人旅とは異なった新たな旅の楽しみ方を堪能(たんのう)しているところです。

そんなこんなで時間が過ぎるのがあっという間で、気がつけばツアーは4日目!
本日も時間通りに迎えにきてくれたドライバーさんの車に乗って出発です。
昨日も長時間運転をしてくれたヨーネスさん。
彼はガイドではないので英語はあまり話せず、会話はアルジェリアの公用語であるフランス語です。
以前の私だったら沈黙のドライブとなっていたかもですが、ちょっと勉強したおかげである程度のコミュニケーションなら取れるように!

「コーヒーを飲まない?」

こんなお誘いを理解できる瞬間がすごく嬉しいです。
フランス語を話せると楽しみが倍増するアフリカ北部や西部の旅。
言語学習にはスマホアプリDuolingoがオススメです。
様々な言語を無料で楽しく一から学ぶことができます。

さて、私も朝の一杯が飲みたかったところ!
ヨーネスさん行きつけのカフェでエスプレッソをテイクアウトしたら、今日は滞在中のコンスタンティン(あとで載せる地図の★マーク)から西へと向かいます。
昨日に引き続き、窓の外に広がるのは美しいアトラス山脈です。

走るのはアルジェリア北部を横に伸びるこの国最大のメイン道路。
まっすぐ4時間ほど行けば首都アルジェまで辿り着きます。
アルジェリアはアフリカ大陸で最も面積が大きい国なので移動=飛行機が当たり前かと思っていましたが、地中海沿いエリアの都市間は道路がバッチリ整備されているので車でも問題無しです。
そして山の景色を眺めながらのドライブはそれだけで最高のアトラクション。

「まさかこんな国だったとは!」

アルジェリアへの感動は一向に止まることはなく、見えるもの全てにココロを奪われるわけですが・・・

「もうここがピークなんじゃない?」

首都アルジェ世界遺産ティムガッド
2つの都市を訪れて正直もう大満足していまして、さらに道中永遠と続く雄大なアトラス山脈で既にお腹はいっぱい。
ツアーもいよいよ後半ということで、ここからは尻すぼみになるのだろうな〜と。
なんならこれから向かうのは世界遺産に登録されているローマ時代の古代植民都市の遺跡。
そう、ティムガッドと同じなんです!
またかぁ〜感が否めないだろうな・・・と思っていました。

主要道路を外れて目的地へと方向転換すると始まったのは傾斜の急な山道。
昨日とは全く違う場所に向かっているという事実に沈みかけていた気持ちが再び浮上し始めてます。
坂道をガンガン進んで上ったり下ったりを繰り返しまして。
走ること数十分。
ようやく視界が開くとそこに見えたのは

これまた初めて出会うアルジェリアの景色です!
ここで先ほどの発言を撤回させていただきます。
この5泊6日のアルジェリアツアー。
尻すぼみするなんてことはなく、興奮は最終日まで右肩上がり!!
この国の観光大国としてのポテンシャルは私の想像を遥(はる)かに越えていたんです。
大変な失礼をお許し下さい。
それでは、改めましてツアー4日目。
コンスタンティンから120kmほど移動してやって来たのは山奥に広がる

「ジェミラ」

という街です。

③ジェミラ

ジェミラは、アルジェリアの北東の岸に近い山村である。
村の名前はアラビア語で「美しいもの」を指す。
それ以前のラテン語での名称はクイクルムだった。
古代ローマ時代の遺跡が良好な保存状態で現存していることから、1982年にユネスコの世界遺産に登録されている。
特に、山の地形に合わせてローマ建築が持ち込まれた点に特色があり、劇場、2つの集会場、寺院、バシリカ、アーチ、街路、住居群などが現存している。

Wikipediaより

坂道を上りきると突如小さな町が現れます。
まさに山奥という表現がピッタリな360度を山に囲まれたこの場所には紀元前から人々が暮らしていました。
そして北アフリカ一帯がローマ帝国の支配下に入るとその手は内陸の方まで伸びてくることとなり、西暦1世紀に植民都市が建てられることに。
最初はローマ兵士たちのためのシンプルな居住地だったのですが、次第に様々な施設が増築されていき規模が徐々に拡大。
3世紀頃には最盛期を迎えることになります。

しかしそのあと395年にローマ帝国が東西に分裂して国力が衰えていくとこの植民都市も衰退の一歩を辿り・・・
7世紀にアラビア半島の方からイスラム教を信仰するアラブの人々がやって来た頃にはこの地は廃墟(はいきょ)となっていました。
ただ、そこに残っていたのは驚くほど見事なローマ建築の町並みで。
故(ゆえ)にアラブのみなさんはこの地を

「ジェミラ」
(アラビア語で「美しいもの」)

と名付けたのでした。

それから千年以上が経った現在もその姿がしっかりと残っているジェミラの遺跡。
昨日もティムガッドの景観に驚かされましたが、ジェミラもこれまたスゴイ保存状態でして。
ローマ帝国後期の都市の様子を今に伝える非常に重要な遺跡になっています。

都市が山の斜面に沿って作られているというのが特徴のジェミラ。
標高約900mのこの地にはティムガッドのようにサハラ砂漠の砂が堆積(たいせき)することはありませんでしたが、それでも今日までこのような状態で遺跡が残っているのはココが人里離れた山奥に位置しているから。
さらにこの地を見つけたアラブの人々がこの都市に居住しなかったのも大きな理由の一つです。
『美しいもの』を後世に残したいという思いがあったのかもしれませんね。

スタート地点は丘の一番高い位置になっているので、坂を下って都市の内部へと進んでいきます。
そして遺跡を巡る際に押さえておきたいのがジェミラは『低いところから町がつくられた』ということ!
丘の上の方が新しい町になるので、時系列的には一気に坂を下って古い町から順番に見ていくのがオススメ。
ですが、これはあくまで理想論。

この遺跡を目の前にして足を止めずにはいられません。
周囲に広がる1000年以上前の不思議な世界に魅了され、柱などの細かい装飾にも目を奪われます。
なのでなかなか下まで辿り着けず。

ローマ帝国時代の遺跡巡りはティムガッドで十分堪能(たんのう)したはずでしたが、ジェミラはまた違った表情を見せてくれまして。
山奥という場所が醸(かも)し出すどこか神聖な雰囲気。
ドラクエで勇者一行が訪れる町にこんなところあった気がするようなしないような。
はい、もう先ほどから冒険の舞台を歩いているような気分で胸が高鳴り続けています。

❶セプティミウス・セウェルス帝神殿

193年から211年までローマ皇帝として在位したセプティミウス・セウェルス帝。
初のアフリカ出身の皇帝として軍事的才能で帝国を統治した彼はジェミラの人々からもあがめられ、その結果この地に彼の名を冠した神殿が造られました。

未だに外壁や屋根の一部が残っていることがとにかくビックリ!
何度も言いますが約1700年前に建てられてますからね。

❷カルカラ帝の凱旋門

そのセプティミウス・セウェルス帝の跡を継いでローマ皇帝となった息子のカルカラ帝。
彼を讃(たた)えて造られたのは高さ12.5mの凱旋門です。
こちらは216年に建設されたということがわかっています。

あまりに立派なこの凱旋門。
一般人は見るだけで満足ですが、権力者の中にはこれを自分のモノにしたいなんて考える方もいるから面白いもの。
レゴブロックのように分解してローマへ持ち帰ろうとした公爵がいたようです。
なんと解体までは進んでしまったそうですがそこでストップ。
そのあと再度組み立てられた結果こうして現在もその姿を目にすることができているわけです。
いやー、持っていかれなくて本当によかった。

❸大浴場

そしてローマの植民都市といえばの大浴場(テルマエ)!
もちろんあります!!
新しい町の中心にドンと建てられた大きな入浴施設。
周辺のどんな建物よりも立派で、今も当時の様子がわかるくらいの状態で残っていることからも古代ローマの人々がこのテルマエへかけた情熱が伝わってきます。

内部の構造がよくわかるジェミラのテルマエ。
広い敷地の中には様々な部屋があり、温浴や冷水浴ができる浴室だけでなく、外気浴ができるフロアまであり、まさに現代のサウナのような環境が作られていたんです。
日本が稲作を始め、小さな国同士で争いをしていた弥生時代に既に『整う』ということを知っていた古代ローマの人々。
そう考えるとなんとも言えない不思議な気分になります。

その他にも3000人が収容できる円形劇場があったり、マーケットが行われていた広間があったりと、かつての暮らしを感じることができるジェミラ。
静かな山々に囲まれたこの町で人々は穏やかな生活をしていたのだろうなと想像しながら歩いていると、ガイドの方が続いて紹介してくれたのはなんてことのない家の跡でした。

「ここがロバの家だよ」

❹ロバの家

人ではなく動物のための家まで造るほどローマのみなさんは余裕があったのか!?
と思ったのですが、実際はそうではないんです。
この「ロバ」というのはこの家の中にあった『あるもの』を指しています。

アルジェリアの古代ローマ植民都市の遺跡の入口に必ず併設されている博物館。
これは昨日訪れたティムガッドにもありました。
わざわざ本物の古代の遺跡を目の前にしているのに、博物館を覗(のぞ)く意味はあるのかと思いながらとりあえず中に入ったのですが・・・

そこに展示されていたのは壁いっぱいに広がる巨大なアート。
一体何でこんな所に!?
と疑問に感じながらも、迫力のある美しい作品に目を釘付けにされまして。
なんじゃコレはとなっている私にガイドさんはもっと近くで見るように促(うなが)してくるので寄ってみると

・・・わかりますでしょうか。
コチラなんと小さな石を並べて描(えが)かれた作品なんです!

「スゲーーーー!!」

❺モザイクアート

モザイクと呼ばれるこの絵画。
様々な色の石をキレイに敷き詰めて作り出される壮大な芸術に驚かされるわけですが、それだけじゃありません。

このモザイクアートが遺跡同様1700年も前の作品であるという事実にドヒャーー!
ウソでしょと疑わざるを得ません。
だってとっても緻密(ちみつ)で繊細(せんさい)で。
今のように生成AIや描画アプリは当然存在しませんし、ましてや見本があったわけでもない時代にコレが作れるとは到底思えません。

が、たしかにティムガッドやジェミラの町の繁栄と同時期に作られたものなんです。
そのことがはっきりとわかる理由があります。
それはモザイクアートが発見された場所です。
わかりやすいのはコチラの作品。
真ん中に四角い穴が空いていますよね。
なぜか?

答えはそこに地下から湧き出てくる水の出口があったから!
はい、ここでもう一度ロバの家の写真をもう一度見て下さい。
真ん中に四角い石が置かれているのがわかります。
・・・ピンときましたか?
そう、先ほどお見せしたモザイクはこの地面に敷かれていたものになります。
つまりこの家の床だったんです!
ロバがこの地面に生えた草を食べていたのかなぁ~と思っていましたがNo!!
床をあれほどの芸術的なモザイクで飾るほどの有力者がこの家には住んでいたということです。

しかも床だけではありません。
古代ローマ時代の建物は入口や壁なども美しいモザイクで装飾されていました。
残された町の残骸(ざんがい)と共にあちこちにあった数々のモザイクアート。
それらを保存するために移転のための発掘作業が行われ、元通りにしたものが博物館に展示されている作品になります。
・・・この事実を知ると遺跡の見え方がまた大きく変わりませんか?
柱だけが残る住居の跡を一見するとさぞ簡素な造りだったのかなと思ってしまいますが、実際はそうではなかったんです。

Loyola University Chicago Digital Special Collectionsより

前置きが長くなりました。
では、どうしてこの家が『ロバの家』と呼ばれるのか。
それはこの家の中にロバのモザイクアートが施されていたからになります。
ロバのモザイクがあったから『ロバの家』です。

❻バッカスの家

ジェミラには他にも『アムピトリーテーの家』『ヒュラースの家』などが存在します。
住人の名前のような響きですが、これらはギリシャ神話の登場人物!
彼らがデザインされたモザイクがあった家ということです。

Google Mapsより

そして、ジェミラで発見されたモザイクの中で最も素晴らしい作品がコチラ。
描かれているのは酒の神バッカスです。
ジェミラの中で最も大きな家にあったこのモザイクアート。
他の作品と比べると石の大きさが小さく、そのためより細かな描写で人物が描かれています。
制作にかかる労力は大変なものだったはずです。
本当にスゴイの一言しか出ません。

あっ、そうです。
みなさん察しの通りこのモザイクで装飾されていた家が『バッカスの家』です。

ということでジェミラの世界観にドップリと浸(ひた)った本日。
今もそこに残る遺跡を実際に歩き、それらを彩っていたモザイクアートの数々を目にすることで当時の様子をイロイロ想像することができてとっても楽しい時間でした。
ティムガッドも良かったですが、それを越えてくる山奥という特別なシチュエーションにあるジェミラの感動。
観光するならティムガッド→ジェミラの順番が◎
Fancyellow Travel Servicesの考えられたツアー行程はさすがです。

ジェミラ観光が終わるのを待っていてくれたヨーネスさんの運転で来た道を帰ります。
5泊6日のツアーも残すところあと2日。
アルジェリアの旅が終わってしまうことへの寂しさを既に感じ始めていますが、感傷に浸っている暇(ひま)はありません。
最後の最後まで思いっきりこの国を満喫していきます!!

DAY358へ続く

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