エジプトを旅する① 世界遺産「アブシンベル神殿」〜個人&日帰りで行くアスワンからの行き方~

2023年1月3日、天気晴れ。

エジプトを旅する

夜行列車の旅というのは大人になってもワクワクするもの。
その舞台がアフリカのエジプトとなれば特別感はさらに倍です。
ただ、少なからずの不安もある列車移動。
外を歩くわけではありませんが、ある意味これも日が暮れてからの外出ということで注意は必要です。
さらに日本の電車旅のような快適さが保証されているわけではありません。
異国の列車に乗る際は毎回全て乗ってみてからのお楽しみなのですが

結果、想像のかなり上をいくエジプト鉄道にビックリ!
寝台車両ではなく一般車両を選びましたが、座席の座り心地は悪くなく、足もある程度伸ばせるので十分寝れます。
もちろん車内はずっと電気がついていたり、駅に停車するたびに物売りの方の声が響いたりするので熟睡とまではいきませんが、それでも

  • 夜の時間を移動のために活用できる
  • 宿代も一泊分浮かすことができる

エジプトの夜行列車は非常にありがたい存在です。
地元の方もたくさん利用しているので、逆に人目が多い点も安心感につながりました。

が、ここは砂漠の国。
朝晩はしっかり冷え込みます。
加えて車内になぜか冷房が効いているのはアフリカ夜間移動あるある。
ここで活躍するのはアフリカ旅の必需品である寝袋。
コンパクトになるやつを一つバックパックに忍(しの)ばせておくだけで本当に役立つ代物です。
暑いイメージのアフリカですが防寒対策は忘れずに。

朝6時を過ぎると少しずつ窓の外が明るくなり、街の様子がぼんやりと見えてきました。
国土の95%が砂漠のエジプト。
世界最大の砂漠

「サハラ砂漠」

の中を流れるのはナイル川。
エジプトの街はこの川沿いに形成され、主要道路や鉄道もこのナイル川に沿って走ります。

そして朝7時。
首都カイロを出発してから14時間。
到着したのはエジプト南部の都市

「アスワン」

です。

②アスワン

アスワンは、エジプト南部、ヌビア地方の都市で、アスワン県の県都。
エジプトの国家の一大事業であったアスワン・ハイ・ダムの近く。
市内には、アガサ・クリスティが『ナイルに死す』を執筆し、その作品の舞台となったことで知られる名門ホテル「オールド・カタラクト」がある。
フィラエ神殿は、世界遺産に登録されている。
アブ・シンベルへの観光拠点でもある。

Wikipediaより

エジプトの南の辺境地アスワン。
なんと①の首都カイロから900kmも離れているんです!
そりゃ電車で14時間もかかるわけで、バスで来る場合は丸一日移動でつぶれるとのこと。
飛行機も飛んでいますがお値段は当然高くつくので、予算を抑えたい場合は列車で来るのがベストです。

では、なぜわざわざこんな南部の街にやって来たのか。
その理由はただ一つ!
エジプトの遺跡の中でも超有名な

「アブシンベル神殿」

この遺跡観光の玄関口になっているのがここアスワンなんです。

世界中から観光客が集まる街ということで駅舎を出ると整った空間が広がります。
一歩外に出るとすかさずタクシーの客引きの声がかかりますが、そこまで高圧的な印象を受けないのはアスワンが観光客不足とは無縁の街だからかもしれません。

ということで、今日はこれからアブシンベル神殿へと向かうわけですが、ここで事前に知っておくべき大切なことが一つ。
それは

『アブシンベル神殿はアスワンからさらに南に300kmほど離れた所(③)にある』

ということ!
先ほど900kmの移動を終えたので、そこから考えると短いなぁと感じてしまうのが面白いわけですが、300km。
はい、どう考えても大移動に該当します。
この有名な遺跡はエジプトの南の果ても果て。
隣国スーダンとの国境付近にあるんです。

駅前にはツアー旅行者用の大型バスも並んでいます。
観光大国エジプトなので、ネットで調べてツアーに参加すればストレスフリーでこの国の観光名所を満喫することも可能です。
駅を出るとそのままバスに乗り込む団体旅行者のみなさんの姿がありました。
目的地に辿り着くその過程も楽しみたい私は自力でアブシンベル神殿を目指します。

アブシンベル行きのバス乗り場

まずはアブシンベル神殿へ行くバス乗り場へ向かうためにタクシーに乗車。
値段の相場は地域によって変わってくるので交渉はうまくできませんが、ここはドライバーさんを信じて乗るしかありません。

すると10分ほどでそれっぽい長距離バスが停まっている場所に到着。
そこに明らかに外国人旅行者だとわかる方たちがいたのでホッと一安心。

「よかった~、これで確実に行ける~!」

もしバスがなかったらどうしよ~なんていう心配は無用でした。
ここは観光大国エジプトです。

しかし、チケット売り場はなんとも言えない小さなプレハブ小屋で。
中のおじさんにチケットを買いたいと伝えると、エジプトでは恒例の「どこから来た?」の質問。
日本ですと答えると

「オォ〜ジャパ〜ン!」

と一気に対応が明るくなるので助かります。

お値段は片道90エジプトポンド(約450円)。
エジプトのチケットはアラビア語表記が多く、特に数字もわからないのが難点です。
なので座席の場所は地元の人に聞いて教えてもらいます。

アスワンに着いてから非常にスムーズに動いてこれたおかげで8時出発のバスに乗れたのはラッキー。
あとはもう目的地であるアブシンベル神殿に到着するのをバスの中で待つのみです。

「ついにあの神殿に行けるぞ〜!」

と思うとテンションが上がりますが、日本出国からここまで実に36時間以上ノンストップで動き続けた結果、爆睡。
道中では何回か警察や軍関係のみなさんによる検問がありますが、その度に起きてまた寝るを繰り返しまして。
気がつくとバスは停車して休憩タイムに。
時計を見ると時刻は10時半。
いつの間にか2時間半も経過していることに驚くわけですが、地図アプリで現在地を確認したところでさらに驚かされます。
目的地までまだ100kmもあるんです。

・・・遠いよ、アブシンベル神殿。

※検問があるのでアブシンベル神殿に行く際には必ずパスポートを持参してください。

実際に行ってみないとわからないことはあるもの。
あの有名な神殿がまさかこんなとんでもない僻地(へきち)にあるなんて。
どこまでも続く砂漠の景色を横目に、バスはさらに南へと進んでいきます。

そして正午過ぎ。

「ついにアブシンベル神殿に到着~!」

と言いたかったのですが、降ろされたのは町のド真ん中。
神殿まではここからまだ2kmほどの場所になります。
ツアーバスではなかったので、終点はアブシンベルの町だったわけです。
が、それでも着いたことには変わりなく。
まだお目当ての遺跡の存在は全く感じませんが、既にものすごい達成感です。

た~だ、まさかアスワンから4時間もかかるとは。
到着したばかりですが、イヤでも帰りのことが心配になってしまいます。
が、もう気にしない!
ここまで来れたわけですから、あとは思いっきり観光を楽しむのみです。
バスを降りるとすぐにバイクタクシーの客引きが押し寄せます。
こちらはかなり強めなので、必要なければその場からサッと退避。
列車とバスでずーっと座った姿勢だったので、歩いて向かうことにしました。

照りつける太陽の日差しを感じながら、一本道を進んでいきます。
案内表示が増えてくるとゴールが近づいてくるワクワク感で足取りは軽くなり。

歩くこと30分。
ついに入場ゲートに到着です。
もうゆっくりしていられません!
チケット売り場で275ポンド(約1200円)支払い入場券を購入。

中では写真撮影はOKだけどフラッシュはダメだよ~と教えてもらったところでいよいよ敷地内へ!
※写真に関してのルールはその時々で変わるそうなので、訪問の際に確認してみて下さい。

この時点ではまだ台形の巨大な丘しか見えません。
『アレ』はこの背面です。
ここまで来てまだその姿を見せないとは、なんとも憎(にく)い演出。
益々高まる期待感を抑えながら、道なりに進むと

目に飛び込んできたのはエジプト南部に広がるナセル湖。
この湖についても少し説明したいところですが・・・違う違う。
これじゃない!
先へ進みます!!

後ろから回り込んでいくと、そこに観光客が集まる開けたエリアが。
『アレ』はもうすぐそこ!
踏み出す一歩一歩に思わず力が入ります。
ずっと見たかったあの遺跡。
ジョジョの奇妙な冒険の聖地にもなっているあの遺跡がすぐそこに!!

見えたーーーーーーーーーーーーーーー!!

世界遺産「アブシンベル神殿」

アブ・シンベル神殿は、エジプト南部、スーダンとの国境近くにあるヌビア遺跡。
オリジナルは、砂岩でできた岩山を掘り進める形で作られた岩窟神殿。
大神殿と小神殿からなる。
建造主は新王国時代第19王朝の王、ラムセス2世。
大神殿は太陽神ラーを、小神殿は女神ハトホルを祭神としている。

建設後、長い年月の内に砂に埋もれていたが、1813年にスイスの東洋学者ヨハン・ルートヴィヒ・ブルクハルトによって小壁の一部が発見され、1817年にブルクハルトの知人であったイタリア人探検家ジョヴァンニ・バッティスタ・ベルツォーニによって出入り口が発掘された。

1960年代、ナイル川にアスワン・ハイ・ダムの建設計画により、水没の危機にあったが、ユネスコによって、国際的な救済活動が行われた。
1964年から1968年の間に、正確に分割されて、約60m上方、ナイル川から210m離れた丘へ、コンクリート製のドームを基盤とする形で移築された。
現在ではアスワン・ハイ・ダムの建設によってできた人造湖のナセル湖のほとりにたたずんでいる。
この大規模な移設工事がきっかけとなり、遺跡や自然を保護する世界遺産が創設された。
アブ・シンベル神殿は世界遺産の象徴的な遺跡で、文化遺産として登録されている。

Wikipediaより

もはやこの遺跡を目の前にして出てくる言葉は2つのみです。

スゲーーーーーーーーーーーーーーーー!!

デケーーーーーーーーーーーーーーーー!!

歴史的にももちろんスゴいわけですが、水没するはずだったこの巨大な神殿を移築したというその事実に仰天(ぎょうてん)。
この移築がなければ今頃は目の前に広がるナセル湖の底だったわけで。
今日こうして実際に目にすることができることにただただ感動です。

その背景も踏まえた上で、改めて眺(なが)める大神殿。

「・・・スゲーよ、なんだよコレは!?」

岩山をくり抜いて造られたエジプト最大の岩窟神殿。
と〜にかくデカイ!!
しかも衝撃なのはこれが今から3000年以上前にできたものなんです。

「ウソだろ~!?」

日本が竪穴式住居に住んで縄目模様の縄文土器を作っていた時に、こんなスゴイものを造る技術をもっていたエジプト。
もはやスゴイを通り越してヤバイです。

そしてこの神殿を造ったのがラムセス2世というエジプトの長い歴史の中でも超有名な王様の一人になります。

「征服王」
「建築王」

と呼ばれるラムセス2世。
そんな王様が自らの神格化のために建てたのがアブシンベル大神殿です。

入口にそびえる高さ約20mの彫像4体はなんと全てご本人!
左から30、40(顔が崩れてますが)、50、60歳の自分とのこと。

「ほぼ同じじゃん!!」

とツッコミたくなりますが、さすが大王という感じですね。
いや~ヤバイ。

中に入ってもヤバイは止らず。
戦いの様子やエジプトの神々、聖なる儀式などが壁一面に描かれていまして。

「遊戯王で見たやつだよ~!」

と一人で大興奮してしまいます。

もちろん素人の私には壁画の意味を理解することはできません。
それでも、見ていると神秘的なパワーが体に宿るような気分になります。

さぁ、この神殿についてのより詳しい情報はネットで検索するとたくさん出てくるので、私の説明はここまでにします。
本当にスゴすぎたアブシンベル神殿。
ちなみに、今回の旅でも写真は全てiPhoneで撮影しています。
照明はあるものの基本的に神殿内部は暗いわけですが、そんな暗所にも強いiPhone。
本当に頼りになるアフリカ旅の最強カメラです。
※中に入ると左右に4体ずつ並ぶこの像も、我らが大王ラムセス2世!

すぐ隣にはラムセス2世が王妃(おうひ)のネフェルタリのために造った小神殿もあります。
が、大神殿を見たあとだとどうしても見劣(おと)りしてしまいます。
人混みがいやだという方にはこちらがオススメですが、やはりアブシンベルといえば大神殿!
長い時間をかけてでも来てよかったと心から思える、本当にスゴすぎる遺跡でした。

2023年の初詣が太陽神の祀(まつ)られているアブシンベル神殿というのは縁起(えんぎ)が良すぎまして。
今年が素晴らしい一年になりそうな予感がしたところで、さぁ帰ります!!

アスワン行きのミニバス乗り場

全く調べていなかった帰り道ですが、行きにバスを降りた場所のすぐ近くに乗合バス乗り場がちゃんとありました。
アスワンまでは100ポンド(約430円)。
人数がある程度集まったら出発です。

アブシンベルにも空港があるので、お金を払えばカイロから飛行機で4時間ほどで来ることも可能です。
が、長距離を移動してきたからこそ味わえる特別な感覚があります。
日帰りだとかなりドタバタですがね。
またいつかじっくりゆっくり見にきたいと思います。

達成感で胸がいっぱいになる中、ミニバスに揺(ゆ)られること3時間半。
アスワンに戻ってくる頃にはすっかり街は夜の景色になっていました。
さすがにもう移動する元気は残っていないぞということで、今夜はアスワンで1泊。
久しぶりのベッドでゆっくり体を休めます。

DAY330へ続く


エジプト旅をもっと楽しむために

エジプトを旅してわかったことが一つ。
この国は歴史について知るとさらに楽しむことができます。
このブログも旅を終えてからいろいろ勉強してわかったことを織り交ぜながら書いているのですが、事前に知っていたらもっと遺跡を楽しめたなぁ~と。
なので、エジプトを知るための情報サイトや動画のリンクを貼っておきます。
エジプト考古学者である河江さんのYouTubeは必見。
アブシンベル神殿の深いところまで教えてくれますよ!

河江肖剰の古代エジプト

アブシンベル神殿バーチャルツアー

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