アルジェリアを旅する② 世界遺産「ティムガッド」〜感動のタイムトラベル体験!古代ローマ時代の都市を歩く〜

2023年6月15日、天気晴れ。

アルジェリアを旅する

入国に必要なビザ取得のために必ず旅行代理店を利用しなければならないアルジェリア。
今回お世話になっているのはツアー会社Fancyellow Travel Servicesです。
本当に親切丁寧なサービスで素晴らしい時間を提供(ていきょう)してくれているので何度も紹介させていただきます。
滞在中のホテルの予約も全て行ってくれているのですが、これがまたとても良い所を用意してくれていまして。
アフリカ旅中は基本的に安めの宿に泊まる私からするとものすごい贅沢(ぜいたく)をさせていただいています。
まぁ、これもツアーの醍醐味(だいごみ)です。
こうなったら思いっきり羽を伸ばします!

朝食のバイキングでこんなにテンションが上がるのも久々です。
コーヒーメーカーまであり朝から感動が止まりません。
朝から美味しいパンを食べて、カフェインも摂取すればこれで準備はバッチリ。
時間通りに朝9時にホテルに迎えに来てくれたドライバーのヨーネスさんの車に乗り込んで出発。
ツアー3日目がスタートです!

ではここで地図を使って現在地を確認したいと思います。
昨日、①首都アルジェから飛行機に乗ること1時間。
やって来たのはコンスタンティンというアルジェリア東部の街(★)です。

この街がとにかくスゴいんです。
稚拙(ちせつ)な表現で申し訳ないのですが、本当にスゲーの一言。
これまで見たことのない驚きの光景に到着早々度肝(どぎも)を抜かれました。
こうなるともう早くこの街を見て回りたい気満々!
ですが、コンスタンティン観光はツアー5日目に予定されているんです。
もちろんこのことは事前にわかっていましたが、あまりにもスゴイ景色が広がっているので気持ちが爆発しそうで。
目の前に美味しそうなメインディッシュが出されているのに食べてはいけないというこの究極の焦(じ)らし。
まぁそれでも我慢するしかないので、先に前菜とスープをいただきます。
・・・とこの時は思っていたんです。
が、あとになってわかったこと。
ここから待っていたのはなんとメインディッシュ3連チャン!!!
私はまだアルジェリアという国のポテンシャルを全くわかっていなかったのです。

コンスタンティンを抜けるとそこに待っていたのは美しい山の世界。
そう、私は大事なことを忘れていました。
アフリカ北部というとつい先行するのが『サハラ砂漠』のイメージかと思います。
しかし、そのさらに北には地中海に沿った形で巨大な山脈が横に広がっているんです。

アトラス山脈

アトラス山脈は、アフリカ大陸北西部のマグリブにある褶曲山脈である。
サハラ砂漠と地中海・大西洋の海岸部とを分離している。
モロッコ、アルジェリア、チュニジアにまたがり、全長は約2500 kmである。
山脈の最高峰は、モロッコ南西部にあるツブカル山(標高4167 m)である。

Wikipediaより
Google Earthより

忘れてしまいがちのこのアトラス山脈の存在。
事実アルジェリアは国土の約80%が砂漠で覆(おお)われています。
なので地図で一見すると間違いなくココは「砂漠の国」なわけですが、主要都市の多くはこの山脈よりも北のエリアに位置するんです。
温暖な気候で植物が育ち、人々が暮らすのに最適な環境が整ったアトラス山脈以北の地中海沿いエリア。
2000年以上前に古代都市カルタゴがあったのもこちら側です。
わざわざ険しい山を越えた先にある砂の世界に足を踏み入れる必要はありませんもんね。

完璧に整備された道路のおかげで移動はとっても快適で。
山の景色に癒やされながら南へ進むこと2時間半。
やって来たのはティムガッドという小さな街です。

車を降りるとそこに立派なゲートが。
ココが今日の目的の観光スポットの入口です。
ドライバーさんとは一度お別れをして、ここでガイドの方と合流。
チケットの購入などは全て済ませてくれるので、私は完全についていくだけです。
ツアーに参加すると気楽に観光ができるのは有難いのですが・・・ちょっと刺激は足りないかなぁ~なんて思いながら敷地内に入っていきます。

当然どんな場所に来たのかはわかっていました。
事前に写真も見ていたので何となくこんな場所だろうなぁ~と予想もできました。
なのでそこまで期待していなかったのが正直なところで、サラッと見て終了かな〜と思っていたのですが・・・
一歩ずつ進むにつれて高まる興奮。
思い描いていたスケールを遙(はる)かに超える景色が少しずつ近づいてくるんです。
そして・・・

気が付くと先ほどまでとは全く違う異世界に到着。
まるで転生やタイムスリップでもしたかのような感覚になります。

「これが・・・ティムガッド!!」

②ティムガッド

ティムガッドは、西暦100年頃にトラヤヌス帝によって建設された古代ローマの植民都市である。
古代ローマ時代にはタムガスと呼ばれていた。
ティムガッドの遺跡は、古代ローマの都市計画に碁盤目状の区画が導入された例を伝える、現存する最良の遺跡の一つである。
長い間砂に埋もれていたことから保存状態がよく、「アフリカのポンペイ」の異名をとる。

Wikipediaより

大昔に作られた遺跡を見るというのはこれまでもあったことですが、足を踏み入れるというのは非常に不思議な感覚です。
また、遺跡というと王の宮殿やお墓といった象徴的なものが多いですが、ここは人々が暮らしていた街になります。
目の前のみならず、360度に広がるのは古代都市の跡。
この通りを歩いていた人たちがいると思うと、歴史の舞台にお邪魔しているかのような気分になります。

そして素人(しろうと)の私にもわかるこの遺跡の状態の良さ。
1900年ほど前の建物の柱や外壁が今もその場に残っているというのはある意味信じられないことです。
エジプトのピラミッドのような巨大なものであればまだしも、小さな家や商店などは風化してなくなってしまうもの。
それなのに今もこんなにハッキリとかつての都市としての気配が感じられるのは、ココが長い間砂の中に埋もれていたからです。

イタリアを中心に今も古代ローマ時代の遺跡が見られる場所はありますが、その中でも非常に良好な状態で残っているものが多いのが、実はアルジェリアを含めた北アフリカエリアになります。
先ほど紹介したように山を越えた南側にはサハラ砂漠が広がる北アフリカ。
その砂が山を越えて飛来し、長い年月をかけて堆積(たいせき)し・・・
遺跡全体を覆うように降り積もった砂が結果的に遺跡を守ってきたのです。
ティムガッドが発掘されたのは1881年。
実に1000年以上も砂の中で眠っていたんです。

ちなみに、今こうして見えているティムガッドの街ですが、これで全てではありません。
なんとまだ掘り起こされていないエリアの方が多いとのこと。

「だったら全部掘り出してしまえば!?」

と思うのですが、既に歴史を知る上での主要な遺跡は発掘できているので、現段階ではこれ以上は掘らないという方針なのでそう。
確かに遺跡を守るというのも大切なことですね。
言い忘れていましたが、こちらのティムガッドはもちろん世界遺産に登録されています。

さぁ、ここからはガイドの方に案内してもらったティムガッドの街を少しずつ紹介していきたいのですが、ここで残念なお知らせです。
教えていただいたアレコレはスマホに全部メモしていたのですが・・・
そのスマホをこの旅の途中に紛失してしまいました。
本当に残念。
かろうじて写真データが半分ほどクラウド上に残っていたのでそれが何よりの救いです。
ということで、説明に関してはネットから引用することをご了承下さい。

❶トラヤヌスの凱旋門

ティムガッドは城壁で囲まれた集落で、東西南北にそれぞれある4つの門から中に入ることができました。
街が大きくなり、西側にも市街地が広がっていくと、それまでの西門は「トラヤヌスの凱旋門」に置き換えられ、この門が新旧のエリアをつなぎました。
トラヤヌスの凱旋門は街で最も印象的な遺跡の一つと見なされることがよくあります。

Ancient Origins参照
Google Mapsより

このトラヤヌスの凱旋門が想像以上に大きくて、その迫力に圧倒されます。

Google Mapsより

門から街の中へと通じる道は柱で飾られ、その中央部は戦車の使用のために特別に設計され、歩行者はその両側を歩きました。

Ancient Origins参照

ちゃんと戦車(チャリオット)が通った車輪の跡が石畳に残っているんです。
ふと気を抜くと映画のセットの中にでもいるのかと疑ってしまうわけですが、こういう小さな点にリアルを感じます。

ティムガッドの中心にあるフォーラムは、商品を販売する場所を主な目的とした公共広場でした。
また、フォーラムは様々な懇親会の場としても活用されました。

Ancient Origins参照

❷劇場

古代ローマの植民都市の特徴の一つは劇場です。
ティムガッドの南には劇場があり、そこで公演が行われました。
劇場は160年代に建てられ、丘の側面を切り開いて形成されました。
約3500人を収容することができます。

Ancient Origins参照
Google Mapsより

トラヤヌス門に続いて目を奪われるのがこの劇場。
キレイな見た目が印象的ですが、なんと音響もしっかり考えられた構造になっていて、舞台の中心で音を出すと観客の左右から音が聞こえるようになっています。

❸公衆浴場(テルマエ)

Livius.orgより

都市のもう一つの特徴は浴場です。
ティムガッドには14もの浴場の遺跡が残っています。
門を入るとすぐの所にある浴場は、その方向から街に入る疲れた旅行者が使用していたでしょう。

Ancient Origins参照

古代ローマといえばの公衆浴場(テルマエ)ももちろんあります。
植民都市をつくるにあたり、その場所に浴場が作れるかというのは古代ローマの人々にとって非常に重要なことでした。
最も大切なのは水資源が確保できるかどうか。
もちろん水というのは浴場のためだけでなく、生きる上で絶対に必要です。
その水を現代のように水道管が通っているわけでもない時代にどのように手にしていたかというと、答えは今日一日ずっとすぐそこにありました。

北アフリカに広がるアトラス山脈。
この山から水を引いたのです。
文明は基本的に川沿いで発展しますが、技術力によって山奥に都市を作った古代ローマ。
そして水は引くだけではダメということを忘れてはいけません。
給水以上に求められるのが排水機能!
使った水は街の外へ出さないと溜まる一方です。
が、そんなことはちゃーんとわかっている古代ローマのみなさん。
通りの石畳には所々に小さな穴が空いていて、よく見てみると中が空洞になっていることがわかります。
さらに街自体が緩(ゆる)い山の斜面に作られているティムガッド。
汚水は街の地下を通って山の麓(ふもと)へと流れていく仕組みになっているんです。
サラッと書いていますが、これを1900年以上も前に作っているという事実を考えれば考えるほどそのスゴさに感服させられます。

その水があることによりもう一つ実現したのが水洗トイレ!
便座の下にも山から引いた水が流れるようになっています。
地味にコレが今日一番の感動ポイントだったかもしれません。
だって、水洗トイレですよ!!

今では世界No.1と呼ばれる日本のトイレですが、水洗になったのは60年前のこと。
その遙(はる)か以前に古代ローマ人は排泄物を水で流すというトイレを作っていたのです。
・・・恐るべし、鼻の高い顔族。
(この写真データが残っていてくれて良かった!)

商売をして生計を立て、劇を見て楽しい一時を過ごし。
風呂に入ってサッパリするという暮らしを2000年前からしていた古代ローマの人々。
彼らの生き方を示す言葉があります。

「Hunting, bathing, playing, laughing―that’s living.」
(狩りをして,風呂に入って,遊んで,笑う―これこそ人生だ。)

ティムガッドの石碑にも彫られていた古代ローマの考え方。
当時の様子を思い浮かべながら遺跡を散策しているとなんだか古代ローマの一員になったような気がして、この言葉が深く心に刻まれました。

ということで1時間半ほどのステキな時空の旅を楽しんだのですが、これだけでは終わりません。
遺跡を巡った後に入口近くのミュージアムも見たのですが、ココの展示がこれまた衝撃でして。
一体何があったのか・・・それはまた次回説明したいと思います。
本日最後はこのティムガッドをさらに楽しむ方法のご紹介です。

❹神殿

Rome in the Footsteps of an XVIIIth Century Travellerより

確かに保存状態が良く、碁盤目状に作られた都市の様子がわかるティムガッドですが・・・
残っているのは柱ばっかり!
一見すると古代ローマが作った街だし、最初からこんな吹き抜けスタイルの感じだったのかなと思ってしまいます。
しかし、実際にはそこに屋根や壁がありました。
積もった砂による上からのチカラに耐えることができた柱だけが残ったのでこのような景色になっています。
逆に言えばこの柱たちがスゴいんです。
まぁそれはさておき、じゃあ実際のティムガッドはどんな外観の街だったのか?
1900年前の写真や文献が残っているわけでもないので、それを知ることは不可能・・・ではありません!
古代ローマの技術力も相当なものでしたが、現代社会も負けていません。
ティムガッドの街をなんと3Dで復元しているアーティストの方がいるんです!!
例えば上の神殿は

Anxo Miján Maroñoさんの作品

こんな感じでした。
先ほどまでとは見え方が変わりますよね。
ここにこんなに立派な神殿が建っていたということをより強く実感できるかと思います。

Anxo Miján Maroñoさんの作品

劇場にもちゃんとステージがあったんです。
ここが人でいっぱいになっていたと想像するとなんだかワクワクします。

Anxo Miján Maroñoさんの作品

もしかして青空トイレだと思っていましたか?
違いますよ~!
個室ではありませんが、この通り外からは見えない仕様になっています。

Anxo Miján Maroñoさんの作品

そしてもちろん凱旋門も。
この当時のイメージを持ってからこの地を訪れると、ティムガッドがまた違って見えるはずです。
人々の声が聞こえてくるような気がしませんか?
(怖い意味ではありません)

世界遺産ティムガッドを訪れた本日。

「スゴイものを見てしまった~」

と帰り道の車の中でも興奮は冷めやらず。
窓の外には午前中とは異なる表情を見せる夕暮れ時の山の景色が広がり。
・・・これがアルジェリア。
この国をもっと知りたいという思いが益々強くなったツアー3日目でした。

DAY357へ続く

1 個のコメント

  • 先生!楽しく読ませて頂きました。
    私も10月アルジェリア訪問し、懐かしく写真拝見しました。10月はティムガードの博物館もアルジェの殉教者祈念等の博物館も何故かしまっていて私は見れませんでしたが、6月は開いてたんですね。見たかった。リビアも博物館はほぼ全部閉まっていました残念。
    ティムガード遺跡は私も楽しめました。入場チケットが100円以下というのは驚きでした。アルジェリアはかなり物価が安かった。今後もサイト拝見いたします。

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