アルジェリアを旅する① 首都「アルジェ」〜世界遺産の旧市街&美しいフランス建築の街並みを歩く〜

2023年6月14日、天気晴れ。

アルジェリアを旅する

一度はビザの取得が間に合わず渡航を断念したアルジェリア。
現地の旅行代理店を通さないとビザが発給されないというシステムで、観光客を招き入れようという姿勢は感じられないこの国。
ネットで調べてもあまり情報が出てこないので一体どんな国なのかわからないまま昨日やって来たのですが・・・
蓋(ふた)を開けてみたらビックリ!

「なんだこの国は!?」

空港から街中へ移動する間だけでも驚きと感動の光景の連続で。
これまで様々なアフリカの国を旅してきた私の心を一瞬で奪ったアルジェリア。
ホテルに着いても興奮は冷めやらず、すぐにでも外に飛び出して街の様子を見に行こうかと思いましたがそこはグッと我慢。
まだその国のことがわかっていない状態で自由に行動するのはリスクがありますからね。
ということで一夜明けて本日。
いよいよアルジェリアの旅がスタートします!

お世話になるのはツアー会社Fancyellow Travel Services
ビザ取得の段階から本当に丁寧に対応していただき、既に感謝の気持ちでいっぱいなのですが本番はここからです。
申し込んだのは5泊6日のアルジェリアツアー。
今日は2日目になります。

朝9時ピッタリにホテルに迎えに来てくれた初日のガイドを務めてくれるザキさん。
彼といっしょに本日巡るのはアルジェリアの首都

「アルジェ」

です。

① アルジェ

アルジェは、北アフリカ、アルジェリアの首都であり、西部地中海に面している。
2010年の都市的地域の人口は335万人であり、世界の第90位、アルジェリアでは第1位である。
地中海の要塞として古くから発達した都市でもある。

Wikipediaより

多くの方が『アフリカ』と聞いたときにイメージするものとは全く違う世界が広がるのが北アフリカです。
人々の多くはアラビア語を話し、イスラム教を信仰しています。
いわゆる『黒人』と呼ばれる人の姿はほとんどありません。
そして地中海を間に挟んでそのすぐ向かいにはヨーロッパが広がる北アフリカ。
アフリカといえば1800年代まではそのほとんどが謎に包まれ「暗黒大陸」と呼ばれていましたが、それはサハラ砂漠より南(サブサハラ)のエリアの話です。

北アフリカが世界史の舞台に初めて登場するのは紀元前!
現在のチュニジアを中心に海岸沿いにカルタゴという国家が誕生します。
地中海貿易で栄え、経済力や軍事力を誇る大国となったカルタゴ。
しかし、同じ地中海の北側を支配していた古代ローマと覇権を競うこととなり、3度の戦争の末に滅亡。
これが「ポエニ戦争」という有名な戦いです。
ヨーロッパやアラビア半島に近いという地理的要因がその後の歴史にも大きく影響してくる北アフリカ。
現在このエリアにアラブの文化が広がるのも8世紀に外部からイスラム教が入ってきたからです。

新しさの中にも歴史を感じる街並みや人々が行き交う街の熱気はこれぞ北アフリカという感じ!
街中を歩いているだけで気分が高まります。
オシャレなカフェやレストランが絵になるメインストリート。
西アフリカを旅したあとに訪れると、ここが同じ『アフリカ』であるという認識を持つのはなかなか難しいです。

ただ、そんな北アフリカの中でも他とは異なる空気が漂うアルジェリアの首都アルジェ。
これまで訪れたチュニジアモロッコエジプトとは何かが違うんです。
落ち着いているというか、穏やかというか。
とっても開放的で心の底から街歩きを楽しんでいる自分がいまして。
初めて経験するこの不思議な感覚。
その理由がアルジェリアの旅をふり返りながらこの文章を書いている今ならわかります。

観光大国を旅するとどうしてもセットになるのが『客引き』です。
道を歩けばタクシーのクラクションが鳴り、お土産屋さんの前を通ろうものなら次から次へと店内に案内されるのは当たり前。
断っても強引に道案内をしてチップを要求してくるなんてケースもあるくらい、とにかく観光客がたくさん訪れる国では私たちは完全にビジネスの対象として見られます。
しつこい客引きなどが原因で「ウザい国」と表現されることがあるエジプトやモロッコですが、それは致し方ないことです。
さぁ、もうおわかりですかね!?

2019年にアルジェリアを訪れた観光客は約230万人。
十分多いようにも感じますが、同年に他の北アフリカ各国はどうだったかというと

  • モロッコ:約1310万人(ビザ不要)
  • エジプト:約1300万人(空港でアライバルビザが超簡単に取得可能)
  • チュニジア:約940万人(ビザ不要)

見てください、この圧倒的な差を!
同じ北アフリカなのにです。
なぜこんなに観光客数が少ないのか?
その答えは昨日ご紹介したようにビザの申請手続きが困難だから。
そしてこれは日本人に限定されたことではありません。
アルジェリアのビザ取得が難しいのはどの国も同じで、何なら日本はその中でもやさしいレベルに入るのだとか。

「政府はアルジェリアビザの制度をもっと緩和すべきなんだよ」

そう嘆(なげ)いていたのはツアー会社Fancyellowのスタッフさん。
観光客が来ればビジネスチャンスは増えますからね。
そう、私が感じていた違和感の正体はこの旅行者をターゲットにしたビジネスの気配がこの国にはほとんどないことでした。
街を歩いていて客引きされることがほぼゼロなのでリラックスして観光を楽しむことができるアルジェリア。
これは北アフリカでは例外中の例外です。

ちなみにアフリカの観光客数ランキングの上位を占めるのも北アフリカ。
先述したとおり紀元前からの長い歴史をもつこのエリアにはエジプトのピラミッドに代表されるような遺跡が点在しており、それらが世界中の旅行者を魅了(みりょう)しているわけです。
・・・ここで一つ懸念すべきことがあります。
ビザの発給を進んで行わないアルジェリア。

「もしかして、観光名所が全然ないんじゃない!?」

そう思われても仕方がありません。

が、実際はその逆だったんです!!
ここまで前振りがだいぶ長くなり申し訳ありません。
アルジェリアという国が周辺国とは違うぞ〜ということを伝えたくてつい熱が入ってしまいました。
この国を知るための基本情報をなんとなくご理解いただけたところで、首都アルジェの観光スポットを順番に回っていきます。

ガッツリ海岸沿いに位置するアルジェですが、少し中に入ると傾斜の急な坂道が続き、丘が広がります。
サッとタクシーを捕まえたガイドのザキさん。
食費以外は全てツアー会社が支払ってくれるので安心して乗りまして、やって来たのはその丘の一番上です。
先ほどまで歩いていた丘の麓(ふもと)のメインストリートとは建物や道路の様子が変わるこのエリアがアルジェの旧市街。
その歴史的な都市構造や建築が世界遺産に登録されています。

世界遺産「アルジェのカスバ」

X @arujetanより

「アルジェのカスバ」はアルジェリアの首都アルジェの旧市街を構成する一画の呼称。
ユネスコの世界遺産にも登録されている。
なお、アルジェリアにはカスバと呼ばれる市街は他にもあるが、単に「カスバ」といった場合には一般にこのアルジェのカスバを指す。
カスバはアラビア語で「城塞」という意味がある。

Wikipediaより

時は16世紀。
アルジェリアの地に進出してきたのはヨーロッパ周辺で長きに渡り主導権を握ってきたローマ(東ローマ帝国)を滅ぼしたオスマン帝国でした。

そのオスマン帝国によってこの丘のテッペンに建てられた城塞(じょうさい)。
陣を取るのは高い場所というのは兵法の基本です。
現在は城壁の一部がほ~んの少し残っているくらいなのですが、その周辺一帯に形成された市街地は当時の状態で残っています。

丘の斜面に沿って作られたアルジェの旧市街。
迷路のように細い路地が入り組んでいるのですが、そのどれもが急な階段になっています。

こんな起伏(きふく)の激しい土地によくこんな街を作ったなぁと思いながら冒険気分でカスバ散策。

そんなカスバを歩いていると建物や階段を修理している建設業者の方々をちょくちょく見かけます。
さすがにこんな土地に建物を建てるというのは無茶があるようで。

長い年月の間に少しずつ傾いてしまっている建物もあり、倒壊してしまったものも少なくないそうです。

観光❶ 絶景スポット「Stah El Bahdja」

そんなアルジェのカスバの観光スポット。
一つ目は丘の上にあるレストランStah El Bahdjaです。
この建物もかなり老朽化(ろうきゅうか)が進んでおり、中に入ると現在進行形で工事が行われている真っ最中。
その様子を横目に軽くきしむ階段を上り、屋上に出ると・・・

そこから見えるのは目の前にいっぱいに広がる首都アルジェ!!

「スゲーーーー!!」

世界最大の砂漠であるサハラ砂漠が国土の半分以上を占めるアルジェリア。
なのでどうしても乾燥地帯のイメージを抱きがちなのですが、それを180度覆(くつがえ)す港湾都市アルジェの景色に思わず圧倒されます。

手前に見えるかなり年季の入った灰色の建物が並ぶのが旧市街。
その奥には朱色の屋根の建物が確認できるかと思います。
あれがフランス植民地の時代に作られた新市街です。
上から見るとその境界線がぼんやりとですが見えてきます。

古代ローマ、オスマン帝国、フランスと大きく3つの時代を経てきたアルジェリア。
その歴史と共に、今を生きる力強さを感じるアルジェの絶景です。

観光❷ 博物館「National Museum of Arts and Popular Traditions」

急な坂道を下から上っていくのが大変なので、最初に高いところに位置する絶景ポイントから回ることになるカスバ観光。
いきなりスゴイ景色を見せつけられるので、そこからはどうしても尻すぼみになってしまいます。
それでもアルジェリアの歴史に触れることができる楽しい時間ですがね。

こちらはオスマン帝国時代に建てられた宮殿で、現在は博物館として一般に公開されています。
1500年代に建てられたとは思えないキレイな内観。
美しいタイル装飾に目が引かれます。

伝統的な工芸品や家具なども展示されていて、アラブの文化も感じられる博物館です。

観光❸ 博物館「Dar Mustapha Pacha」

もう一度言いますが、絶景のあとなので「ついで感」はお許し下さい。
そしてまたまた博物館です。

こちらも宮殿を利用した博物館ですが、先ほどと違ってちゃんと誰の家だったかがわかっています。
ムスタファパシャさんが1798年から3年かけて建設したこの宮殿。
基本的な構造は同じですが、先ほどよりも明らかに大きく立派な造りになっています。

かつてのお金持ちはこんな豪華な家に住んでいたんだなぁ~と。
・・・はい、もう博物館は十分ですね。
ちなみにこちらの建物内部にはアートやカリグラフィー(アラビア文字の書)が展示されています。

2時間かけてゆっくりと旧市街を下ってきたところで、海沿いのエリアに到着。
世界遺産アルジェのカスバ散歩はこれにて終了です。
いや~、大満足!
正直ここでアルジェ観光が終わっても文句が無いくらい街歩きを楽しませていただきました。
が、まだ終わらないんです!!

時刻はちょうど12時ということでお昼ごはんを食べまして、午後は新市街を回ります。
実はこのお昼に食べたのが感動のアルジェリア料理だったのですが、それをココで紹介しているとまた話が長くなるので先へ進みます。

海沿いに広がる新市街。
完璧な計算で作られたヨーロッパ建築の建物がビシッと並びます。

同じ街なのにカスバとは全く異なる街並みに終始ワクワクが止まらず。

「これがアルジェか!」

と噛(か)みしめるように景色を目に焼きつけながら歩きます。

気持ちの良い海沿い散歩のあとは地下鉄に乗車。

地下鉄は北アフリカでは珍しくないのですが、アルジェリアのメトロはこれまたワンランク上の清潔感がありまして。
今日はもう朝から終始驚かされっぱなしです。

観光❹ 庭園「Jardin Botanique du Hamma」

地上に出た瞬間に全く違う世界に来たような感覚になるのがメトロ移動の楽しいところ。
距離的にはそんなに移動したわけではないんですがね。
やって来たのは立派な門構えの植物園。
入り口前の売店でコーヒーを買って中へ入ると

まるで絵画のような景色が広がります。
先ほどまでとは打って変わって自然を思いっきり感じることができるこの庭園。
見た目の美しさもさることながら、植物の保護にも力を入れていて、世界中の植物がこの場所に集まっています。

メインとなるのは巨大なフレンチスタイルの庭園と英国式のイングリッシュガーデン。
この2つの庭園を中心に、敷地内にはテーマごとに大小様々なエリアがあります。
歩いているといつの間にか植物の様子が変わっていくのがとっても面白いです。

美しい自然を眺めながら、コーヒー片手にのんびり庭園を歩くというなんとも贅沢な時間。ここは地元の人たちの憩(いこ)いの場にもなっていて、たくさんの人で賑(にぎ)わっていました。

観光❺ 独立記念塔&博物館「Martyrs’ Memorial & Martyr’s Museum」

そんな庭園からも見えるのが丘の上にある大きな塔です。
アルジェのカスバからも遠くにハッキリとその姿を確認することができていたので、何だろうと気になっていたのですが、この塔が首都アルジェツアー最後の目的地でした。

では、またタクシーを捕まえて出発かと思ったところでザキさんが一言。

「ロープウェイで行くよ!」

はい?
そんなものあるわけが~と思ったらなんと庭園を出たすぐの所に駅があるそうで。
信じられない気持ちで向かってみると

丘の上の方から本当に搬器(はんき)が降りてくるからビックリ!
改めてアルジェが海岸沿いに位置する起伏の激しい丘の街であることを理解すると共に、アルジェリアが私の想定を遙かに超える発展した国であることを痛感しました。
侮(あなど)って申し訳ありません!!

ロープウェイに乗ってわずか数分。
またまた丘の上にやって来まして、下に広がる港の景色を眺めながら歩いていると目の前にドンッと現れたのが1982年、アルジェリア独立20周年の際に建てられた記念塔です。

遮(さえぎ)るものが何もない場所に天まで届くかのごとくそびえる高さ92mのこの塔。
その正式な和訳は

殉教者記念碑
(犠牲者記念碑)

アルジェリア独立戦争の死者を追悼(ついとう)する記念碑です。

3枚のヤシの葉が組み合わさった形の特徴的な塔の下には祭壇があり、常に慰霊(いれい)の火が燃えています。
非常に神聖な場所のため地元の人でも立ち入りは不可です。

それでも多くの人がこの場所を訪れます。
そのもう一つの理由は、この記念碑の地下にある博物館。
古代ローマの時代から始まり、オスマン帝国、フランス植民地の時代を経て、戦争によって独立を果たすまでのアルジェリアの歴史が展示と共にわかりやすく解説されています。
特に後半の独立戦争に関しては強いメッセージ性のある内容で。
犠牲となった多くの命があることを見る者に強く訴えます。
丘の上から見えたアルジェの美しい街並みですが、そこには植民地時代の歴史があったことを忘れてはいけないということを改めて感じました。
※博物館内は写真撮影NGです。

ということで首都アルジェを巡った本日。
ほんの少し街を見ただけですが、これまで抱いていたアルジェリアに対する印象が思いっきり変わった一日でした。
街中を歩いているだけで本当に楽しくて

「もっといろんな場所を見てみたい~!」

となるのですが、残念ながらここでツアーは終了。

ステキなガイドをしてくれたザキさんとはここでお別れです。
迎えに来てくれた車に後ろ髪を引かれる思いで乗り込み、空港へと向かいます。

ツアー2日目のラストは夕方18時の飛行機でアルジェを出発して次の街へ!
ただこの街というのがこれまたとんでもなくスゴイ所で、到着早々大興奮!!
アルジェリアに来てからもうずっとドキドキが収まる気配がありません。

「果たして明日はどんな感動が待っているのか!?」

アルジェリアツアーはまだ始まったばかりです。

DAY356へ続く

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