ブルキナファソを旅する⑨ 西アフリカの伝統布「泥染ボゴラン」〜首都ワガドゥーグーのPCR検査情報〜

2021年7月11日、天気くもり時々晴れ。

ブルキナファソの歩き方

イスラム教が主流の国を旅すると街中に流れるコーラン(イスラム教の経典)が目覚まし時計の代わりになります。ここブルキナファソもそんな国の一つです。朝早くから行動を開始したい日にはありがたいコーラン。朝シャワーも浴びてバッチリ気合を入れたところで、出国前日の本日はまずPCR検査を受けるためにクリニックへと向かいます!

PCR検査 inワガドゥーグー

やって来たのはワガドゥーグーの街の南部にあるクリニック(Laboratoire BIO2000)です。こちらを紹介してくれたのはこの旅でたくさんお世話になっているてんやわんやママさん。PCR検査を受けることができる場所が事前に把握できたおかげで今日までの旅を思いっきり楽しむことができました。本当に感謝です!

朝10時頃に到着するとすでに5名ほどの方が検査を受けるために順番待ちをしていました。そのあとも続々と人がやってくるクリニック。やはりPCR検査を受ける日は午前中の早めの時間がベストです。受け取った全てフランス語で記載されている問診票の記入をなんとか終えて、検査代25000CFAフラン(約5000円)といっしょに提出。自分の名前が呼ばれたら部屋に入り、マスクを外して上を向き、痛くないかな~と心配しようと思った瞬間にはもう検査終了!あまりに速すぎる鼻腔検査でした。所要時間は全て通して30分ほど。あとはいつも通り結果が出るのを待つのみです。

西アフリカの伝統布「ボゴラン」

コロナ禍の旅ではPCR検査が終わると一気に出国モードに気持ちが切り替わります。明日にはこの国ともお別れかぁ~となるわけですが、まだ終わることができないのが今回のブルキナファソの旅!やって来たのは初日にも訪れたワガドゥーグーの工芸職人が集まるVillage Artisanal。この旅の最後は西アフリカの伝統の染め物「ボゴラン」に挑戦します!!

「ボゴラン」とは

ボゴランは、マリ、ブルキナファソ、ギニア、コートジボワール、セネガルで使用されている伝統的に発酵泥で染色された手作りの綿生地です。伝統的なマリ文化において重要な位置を占めており、最近ではマリを中心とした西アフリカの文化的アイデンティティの象徴となっています。この布は、ファッション、美術、装飾に使用するために世界中に輸出されています。

Wikipedia英語/仏語ver.参考】

ブルキナファソの隣国マリの南西部に住むバンバラ族に伝わる伝統布ボゴラン。バンバラ語でボゴは「泥」、ランは「~で作られる」の意で、「泥染」と訳されるこのボゴラン。

今回はこのVillage Artisanalの工房でボゴランを作っている職人のアマドゥーさんの指導のもと、ボゴランの製作体験をさせていただくことになりました。そして”体験”と書きましたが内容はものすごく本格的!正式な工程で泥染を指導していただけるので製作には最低でも2日は必要。さらにこだわって仕上げる場合は3日!ということで3日に分けて行われたボゴラン製作の様子を今日はまとめてご紹介したいと思います。

染料

まずボゴランに使用する染料。これはこのクラフトマーケットの敷地内で手に入るものばかり。それも買ってくるわけではありません。例えばコチラはそこらに生えている木の葉っぱ。これを乾燥させて水につけておくと

黄色い染料が完成します!「シガー」と呼ばれるボゴランの下地染めに使うこの染料はこれがないと始まらないというものすごく重要なものになります。

肝心な泥は敷地内にある甕(かめ)の中に。やはりどんな泥でも良いわけではなく、この甕の中で発酵(はっこう)された泥を使用します。この泥がデザインに欠かすことのできない黒色に!美しい模様はこの泥で描かれます。

その他にも灰を使って作られる茶色や薬品から生まれる赤など様々な色がある染料。どんな色や模様をつけようかと考えるだけでワクワクしてきます。

作業① 下地を塗る

ではいよいよボゴラン作りスタートです。ブルキナファソ産の綿花で織られた布。こちらにまずはシガーの葉で作られた染料を塗っていきます。

ハケを使って黄色に塗り上げていく単調な作業。ムラが出ないようにしっかりと塗っていきます。ポイントは「スモール、スモール(少しずつ)」です。

ある程度終わるとアマドゥーさんのチェックが入ります。いい感じに塗れている時は「セボン(Good)」と言ってくれるやさしいアマドゥーさん。ハケの持ち方や塗り方まで丁寧に教えてくれるので安心して作業が進められます。

そんなこんなで20分ほどで下地を塗る作業が完了。あえて1本だけ塗らない場所を作りました。

作業② 乾燥させる

ここで一度乾燥させます。太陽の下に広げておくこと20分。しっかりと乾かしたところで

作業③ もう一度下地を塗る

下地の重ね塗りをします。この時は「別にもう十分黄色くなってるからいいでしょ~」と内心思っていました。が、泥染においてこの下地のシガーが最も重要なものだということを私はあとで知ることになります。ということで二度目の下地を塗り終えて作業1日目が終了です。

作業④ 乾燥させる

改めて下地を完璧に塗り終えた布を乾かしまして、いよいよ作業2日目がスタートします。

作業⑤ 泥で模様を染める

いよいよボゴランの醍醐味である模様を染めていきます。ここでついに登場するのが泥!

職人のみなさんが作った大小様々なサイズの幾何学(きかがく)模様の型。これを使ってマスキングをしながら布に泥で模様を描いていきます。

が、これが実に難しい!泥が多すぎると模様がつぶれてしまうんです。なのでここでもアマドゥーさんの「スモール、スモール」の合言葉を忘れずに。ハケにつける泥の量にも注意が必要です。

同じ作業をサラサラサラっと流れるように行うアマドゥーさん。簡単そうに見えていたのにいざやってみるとうまくいかない上に時間がかかるんです。自分で体験したことで改めて職人のみなさんの技術のスゴさを体感することができました。

それでも慣れてくると意外とイイ感じにできてるんじゃない!?なんて調子に乗ってくるもの。アマドゥーさんにも「セボン!」をいただきまして益々ヤル気アップです!!が、その途中でアマドゥーさんから思わぬ一言が。

「この白地の上に塗った泥は黒にはならない。消えてしまうよ。」

「泥染」と聞くと最初は泥でお絵描きでもする感じかなと思っていました。しかしその原理はまさに化学そのもの!実はこの泥だけでは色は染まらず、下地に塗ったシガーの液体と反応することによって黒色になるというんです!!…まさかぁ~。生意気なボゴラン見習いの私は思いました。

休憩 ご飯を食べる

大きなお盆を持ってどこかへ出かけていった職人のお兄さん。帰ってくるとその上には美味しそうなアチェケが!

「食べるよ。」

アマドゥーさんにお誘いいただき自分も混ぜてもらい、3人でいただくアチェケ。美味しくないわけがありません。職人のみなさんの仲間入りをさせてもらったような気分で心は温かくなり、美味しいアチェケでおなかは満たされ。しあわせなお昼ご飯でした。

作業⑥ 色を塗る

そして2日目最後の工程は色塗りです。選んだのは茶色の染料!泥でつけた模様の上からしっかりとハケで液体を布に染み込ませて作業は完了です。…今度は逆にせっかく泥でつけた模様が消えちゃうんじゃないの?という心配をする本当に生意気なボゴラン見習いの私です。そして翌日、ボゴラン体験3日目。

作業⑦ 乾燥→洗う→乾燥

見た瞬間に思わず「オォ~!」と歓声があがりました。本当に白地に塗った泥は消えていて、茶色に塗ったところには黒の模様はハッキリと!まぁ職人アマドゥーさんが言うんだから当然でした。生意気な自分を反省したところで

作業⑧ 色を塗る(2色目)

私のこだわりで最後に赤で差し色を!こちらは自然色ではなく薬品を使って出した色になります。時代によって進化をとげるボゴランです。

作業⑨ 乾燥させる

そして最後に乾燥をさせたらこれにて完成!!予想以上の出来栄えに達成感も一入(ひとしお)です。作業が進めば進むほど楽しくなってくるボゴランづくり。ただ、小さいサイズでヒーヒー言っている自分なので、大きなものになるとより根気が必要なことは間違いありません。そして見れば見るほど不思議で魅力的な泥染。楽しく伝統文化に触れることができるボゴラン体験でした!

それもこれも全ては指導してくれたアマドゥーさんのおかげです。私の製作中にも隣でどんどんボゴランを作り上げていたアマドゥーさん。カッコイイ職人の背中を見せていただきました。メルシーボークー!!

ということで3日間かけて作った世界に一つだけのボゴラン。ちなみに後日判明したことですが、洗濯をすると赤は色落ちをして薄いオレンジのようになりました。が、その他の色は全く変わることなく色鮮やかなままです!受け継がれてきた伝統の自然色のチカラを感じるのでした。

いよいよ明日は出国。ブルキナファソで迎える最後の夕方にとってもキレイな虹がかかったのでおそらくPCR検査の結果も大丈夫なはずです!ブルキナファソの旅、最後の最後まで楽しみます!!

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