2019年4月21日、天気くもり。
目次
チュニジアの歩き方
今日はとにかく
「想いは言葉をこえる」
ということを感じた一日でした。本当に。
昨日一日かけてやってきたのは首都から400km南にあるタタウィンという町です。高いビルはなく、遠くにはアフリカ特有のテーブルマウンテン(頂上が平らな山のこと)が見え、砂漠(さばく)近くならではの独特の砂っぽい風が吹きます。そして夜になると街灯の明かりだけで辺りはほぼ真っ暗。あぁ、コレ!コレだよコレ!この感じを求めていた自分がいました。
そしてこの町で過ごす一日が私にとって大きな挑戦(ちょうせん)になることは、ホテルに着いてすぐにわかりました。英語が全く通じないんです!
これまでチュニジアで訪れた(おとずれた)場所ではかろうじて英語が通じたので、そこまで困ったことはありませんでした。が、この町では英語が本当に通じません。昨日の夜に行ったレストランでも終始アラビア語。そんな中、今日はいろんなところを見て回りたいわけで、そのためには車の交渉やらなんやらがあるわけで…大丈夫(だいじょうぶ)かな??さすがに心配になり、昨夜の内に行きたい場所の情報だけは集めて今朝を迎え(むかえ)ました。
今回泊まったHOTEL AMILCARは1泊朝食付きで40ディナール(約1500円)。部屋ではWi-Fiが使えませんが、食堂ならサクサクネットが使えます。ということで食堂でいろいろ調べものをしていると、ホテルのアルバイトのような青年が、スマホに何かをしゃべって自分に見せてきたんです。
「名前は何ですか?」
アラビア語がスマホで英語に変わる。それだけで心が通じたようなしあわせが胸いっぱいに広がりました。
「コジマです!」
そこから彼がいろいろとスマホを使って自分にいろいろ話しかけてくれました。なので私もすかさず翻訳(ほんやく)アプリをダウンロード!そこからはスマホの画面見せながら、でもだまってるわけではなく英語とアラビア語で会話。機械的な翻訳とカタコトの会話なのでうまく意思は伝えられませんが、これ本当にやってみると感激しました!自分の言いたいことが少しでも相手に伝わる。これがどれだけ嬉しいことか!!そしてしばらくすると彼が
「今日はどこに行くの?」
というので、行き先を伝えて、ついでに移動手段について質問をしました。そこからは悪戦苦闘(あくせんくとう)しながら自分がしたいことを伝えるのですが、なかなか伝わらない。でも彼は一生懸命何度もスマホに向かってアラビア語で話しかけるんです。たまに変な変換がされて、2人で笑い合うこともしばしば。結局翻訳アプリのみでは複雑なやり取りはできませんでした。そして彼は
「待ってて。」
と一言残して去って行きました。
これだけでもすごく楽しい朝で、翻訳アプリって本当にすごいなぁと思いながら朝ごはんのフランスパンを丸ごと一本食べてたんです(本当にチュニジアはパンが美味しい!)。すると、朝からシフトに入っていたホテルの受付の女性が「ちょっといい?」と私のことを呼んできました。彼もそこにいたんです。そして彼女は英語が話せました。
「彼といっしょに地元の小さなルアージュ乗り場まで行って!そこから自分で目的地に向かうルアージュを捕まえ(つかまえ)られると思うから!」
本当ですか!?もう不安が一気に吹き飛びました!というよりも彼が真剣に私のことを考えて行動してくれてたことが嬉しすぎました。何回シュクランを言ったかわかりません。今日という一日が一気に明るい希望に満ちてきまして、朝食を食べ終えてすぐに出発だ!!と外に出ようとすると受付の彼女が
「70ディナールでホテルからタクシーを貸し切って観光できるようにしたけどどう?」
実は昨日、タタウィンの町に着いてすぐにタクシードライバーに声をかけられました。
「英語が話せるタクシードライバーはこの町で自分だけ!100ディナールで回るよ!」。
たしかに魅力的(みりょくてき)ではあったのですが、あまりに商売気質が強くちょっとためらう気持ちがあったんです。でも、この彼女と彼の提案はありがたくお願いしました。値段が安いとかではなく、自分のためにここまでしてくれたというのが理由でした。
彼の名前はウセマ。言葉も通じない自分に声をかけ、思いをわかって行動してくれた親切すぎる彼。本当にありがとう。そして私も今のままではいけないんです。シュクランだけでは気持ちは伝わりません。何のために外国語を勉強するのか。日本の小学校でも本格的に外国語(英語)の授業が始まっていますが、何より大事なのは、言葉は
「想いを伝える手段」
だということです。別に英語じゃなくても何語を勉強してもいいんです。英語は世界共通語!ではないことはもうこの数日でよーくわかりました。伝えたい想いを表現することのできる手段の一つが言語!決してテストで点数を取るための手段ではないということを覚えておいて下さい。…とカッコつけていますが、アラビア語は難しいです。なのでまだ大したことは伝えられませんが、それでも覚えた言葉はすぐに使います。シュクラン!ビスレーマ(さよなら)!
ということで今日はここタタウィンを中心に周辺の観光スポットをタクシーで巡ります!まずはタタウィン(Wikipediaでは「タタウイヌ」と和訳されています)の紹介です。
⑦タタウィン
タタウイヌはチュニジア南部、タタウイヌ県の県都である。北緯 32°55′60″、西経 10°26′60″Eに位置する。ベルベル人の要塞の遺跡であるクサールで有名である。 Ksar Ouled Soltaneや、 Chenini、Douiretがある。1931年6月27日、隕石の落下があり、12kgの破片が発見された。稀少なエイコンドライトであるダイオジェナイトに分類される隕石であった。ジョージ・ルーカスがスター・ウォーズを撮影した場所としても知られる。またSFテレビドラマのXファイルにも地球外ウイルスの実験施設が開かれた場所として登場した。【Wikipediaより】
こんな小さな町なのにWikipediaの説明のなんと充実したことか!おそらく『ジョージルーカス』というパワーワードが紹介に入っている町はアフリカの中でもここだけかと。ということでチュニジアの中でも実は非常に人気のあるタタウィンを起点に巡る南部観光。まずは今年の年末にシリーズラストとなるエピソード9が公開するスターウォーズの撮影地(さつえいち)へと向かいました!
スターウォーズのロケ地「スルタン」
タタウィンから車で走ること30分ほど。あたりには特に何もない場所に突然現れたのはなんとも不思議な空間でした。
4階建に見えるそれは、チュニジアの先住民であるベルベル人が倉庫や住居として使っていたクサールと呼ばれる建物です。丸みを帯びた形がどことなくかわいくも思えてきます。
そしてこのスルタンのクサールで撮影されたのが映画スターウォーズ!!一度でもスターウォーズを見たことがあると、なんとなく見た記憶があるような景色ではないでしょうか。
ここはエピソード1でアナキンスカイウォーカーが子ども時代に過ごした場所として登場します。現在は人は住んでおらず、遺跡として残るクサールウレドスルタン。敷地自体は大きくなく、ここでこじんまりと小集団が生活をしていたことが想像できます。
このなんとも言えない異空間はまさにスターウォーズの世界観にピッタリ!ちなみに、チュニジアにはここ以外にもたーくさんのスターウォーズのロケ地があり、熱狂的なファンの間では聖地となっています。まるで異世界のような風景が広がるチュニジア南部です。
さぁ、再び車に乗り込みカラカラの大地を走っていきます。次に向かうのはスルタンとはまた一風変わったクサールです!
山岳都市「シェニニ」
ここもベルベル人によって造られたクサールの一つです。しかし、スルタンと大きく違うのは山の上に造られているとという点です。見た目も先ほどのスルタンのかわいさから比べると、まるで一つの世界のような強さが感じられます。
ここは襲って(おそって)くる敵から身を守るために高い所に造られたクサール。今でも60ほどの家族がここで生活しているそうです。
10ディナールでガイドをしてくれるということだったのでお願い(おねがい)をすると、山を登りながら生活の様子を紹介してもらうことができました。
これはオリーブの実をしぼるための巨大な臼(うす)です。が、さすがに大きすぎて人の力では回せません。
そこで力を借りるのがラクダ!このクサールの中でヤギも一緒に生活をしているそうです。
それにしても風が強いくてそれでいて暑いシェニニ。そんな暑さをしのぎたい時は穴のようにくりぬかれた住居の中に入ると、これがまぁ涼しい(すずしい)!暑さや風対策が考えられたクサールの構造にも驚か(おどろか)されました。
下から見ても上から見ても、迫力(はくりょく)満点のシェニニでした!
2つのクサールを巡り(めぐり)、チュニジアの大自然と人工美を満喫(まんきつ)!それもこれもタクシーを手配してもらうことができたからです。ドライバーを務めてくれたアリーさんもやはり英語は一切しゃべれませんでした。それでもアラビア語でずっと何かをたずねたり教えてくれたりするんです!もちろんわからないのですが、ところどころでアリーが言おうとしてくれていることが本能的にわかる瞬間が。アリーさんが聞いてることにバッチリ自分が答えられたことがわかった時は二人で大喜び!アラビア語でイエス!は「ウィー!」なので、二人でウィーウィー言って盛り上がりました。なぜ言葉がわからないのにこんなに居心地がいいのか。想いは言葉を超える。本当に今日はすごく嬉しい気持ちでいっぱいになりました。
オリーブの木
アリーさんが教えてくれたことを一つ。チュニジアを鉄道やルアージュで移動していると、窓からいつもキレイに植えられた木が見えるんです。あまりにも縦横にビシーッと並んでるので、まぁおそらく何かの木なんだろうなぁと思っていたのですが、今日このタタウィン周辺を巡った後にピン!ときたんです。いつもレストランの料理に必ずと言っていいほど入っているアレ!そして今日もシェニニのガイドさんが紹介してくれたアレ!アリーさんに聞くと
「そうだよ!あれはオリーブの木だ!ここら辺は少ない方だよ。ジェルバ島に行けばもっとたくさんある。チュニジアのオリーブ生産量は世界第3位なんだ!」
旅をしていて疑問に思っていたことが判明した時のスッキリは快感(かいかん)です。ちなみにこれも全部アラビア語で彼が言ってたことです。世界第3位は指を3本立てて教えてくれました。おそらく合っていると思います。アリーさん、シュクラン!
再び「スファックス」へ
さぁ、とんでもない強風だった本日。アリーさんに聞いたらこれはいつもではない!とのことだったので、今日だけ特別だったようです。砂ぼこりまみれになりましたが、心はチュニジアでいっぱいになった気分です。午後はルアージュで来た道を戻ります。やはり田舎の町あるあるで、大きな街ではバンバン出発していたルアージュでしたが、タタウィンでは人が集まりません。今日はラスト一人が来なかったのでなかなか出発できなかったのですが、最後は乗客のみんなで割り勘(わりかん)をすることでこの問題を解決しました!結局出発までは2時間待ちでしたがまぁ比較的早い方です!今日の目的地は昨日少しだけ寄ったスファックス。南部からまた都会へと戻ります。
ローカルドリンク「レグミル」
そしてその道の途中、休憩(きゅうけい)のために車が停まりました。私は車の中で座っていたのですが、先ほどルアージュ代の割り勘をみんなに提案した男性が外から声をかけてきたんです。
「これ、飲まないか?」
彼がすすめてくれたのは、アラビア語で「レグミル」という飲み物でした。ヤシの実的なやつからとれるそうで、甘く(あまく)て疲れた体にちょうどいい味の爽やかドリンク!車の中が熱くてノドがかわいてた上に美味しすぎたのでもう一瞬(いっしゅん)で飲んでしまいました。もちろん売り物なのでお金を払おうとしたら
「チュニジアへようこそ!出会えて嬉しいからお金はいらないよ!」
ダンディーな店主さんがなんとサービスをしてくれました!本当にチュニジアの人たちのやさしさに何度も心があったかくなるしあわせすぎる一日でした。
そのあとタイヤがパンクして、乗客みんなで協力したのも良い思い出です。
すてきな旅行記ありがとうございます。私もタタウィン大好きです。2000年の年末年始で行きましたが、やはりタタウィンからガベスに戻るルアージュの人数が集まらず、2時間待った挙げ句、皆で割り勘という、同じ体験をしました。変わらないですね、チュニジア。人の温かさも変わらないですね、チュニジアは。私もいっぱい助けられました。
タタウィンはチュニジアの中でも砂漠を全身で感じることができる町ですよね!ルアージュといっしょに思い出す出会った人たちの温かさ。チュニジアは何度も行きたい国です。