シエラレオネを旅する④ ダイヤモンド採掘現場を訪ねて 〜東部コノの中心地コイドゥ〜

2023年5月29日、天気晴れ。

シエラレオネを旅する

エアコンはないので一晩中ファンを回して暑さに耐えながら寝る熱帯エリアの地方で過ごす夜。
さぞかし寝苦しいかと思いきや、日中の旅疲れで案外快眠できるものです。
ただ暑さよりも厄介なのが気になり出すと止まらない痒(かゆ)み!
日本から持ってきた殺虫スプレーを使ってもしばらくするとまた現れる西アフリカの元気なモスキート(蚊)たち。
シエラレオネに来てから一体何ヶ所刺されたことか・・・
あまりに刺されるのでいつかマラリアになるかもしれないと心配になりますが、今日も私は元気です。

昨日到着したシエラレオネ東部のコノという地区の中心地コイドゥ。
今日はこの街でいつか見たかった

「ダイヤモンドの採掘現場を見る」

という夢を叶えます!

②コイドゥ

コイドゥは、シエラレオネの都市。
近郊にダイヤモンド鉱脈があり開発が進んだが、一時は内戦によって荒廃した。
シエラレオネ第四の規模を有する都市であり、人口は約11万2千人(2004年)。

Wikipediaより

産出量は世界TOP10にギリギリ入るか入らないかという感じでそこまで多くはないシエラレオネ。
しかし、なぜ私がこの国のダイヤモンドにそこまで興味を持つのか。

2006年に公開された映画『ブラッドダイヤモンド』。
レオナルドディカプリオ主演のこの作品で描かれたのは10年以上続いたシエラレオネの内戦です。
かなり重い内容で、私も初めて見た時は映し出される世界のインパクトに強い衝撃を受けました。
実際に内戦中のシエラレオネで起きていたことがよくわかる、アフリカを知る上で是非見ていただきたい一本です。
その内戦の引き金にもなったのがこの国で採れるダイヤモンドでした。

紛争ダイヤモンド

ダイヤモンドなどの宝石は、国際市場で高値の取引が行われる。
産出国にとっては貴重な外貨獲得資源となるが、その産出国が内戦など紛争地域だと、その国家は輸出したダイヤモンドなど宝石類で得た外貨を武器の購入に充てるため、内戦が長期化および深刻化することになる。
とくに反政府組織はこれら鉱物資源による外貨獲得とそれによる武器購入を広く行っている。
その際には罪のない人々を採掘に苦役させることから人道上も大きな問題がある。

Wikipediaより

ダイヤモンドによる内戦の長期化はダイヤモンド資源に恵まれたアフリカの他の国でも起きていましたが、特にその影響が大きかったのがシエラレオネでした。
そして内戦終結から20年以上が経過した現在。
ダイヤモンドはこの国の経済の一端を担う重要な産業になっています。

そんなシエラレオネのダイヤモンド。
この国に来たからにはその採掘現場を見てみたいと思っていたわけですが、そう簡単に見られるものではないことも重々承知していました。
それでも一応確認をと思い、首都フリータウンでお世話になった宿のスタッフさんに聞くと

「コノのコイドゥに行けば見られるよ!」

と教えてもらったのでやって来たというわけです。
街に着くとすぐに発見したダイヤモンドのモニュメント。

街中にもダイヤモンドを買えそうなお店が並び、益々期待が高まります。
コイドゥの街でお世話になる宿のスタッフさんにも話を聞くと

「ゲートで許可証をもらえば見られるよ!」

とのこと。
正直見られない可能性の方が大きいと思っていたので、みなさんの話を聞いてもまだ半信半疑。
でもこれはチャレンジする価値はあるぞということで、地図を頼りにダイヤモンド探しの冒険に出発するのでした。

といってもどこにゲートがあるかはわからず。
スタッフさんは

「バイクタクシーに言えばわかるはず」

と言っていたのですが、初めての街に来た時はどうしても自分の足で歩きたくなる性分で。
・・・これが今回は吉と出たのか凶と出たのか。
さっそく向かったのは街からも見える石がたくさん積まれた気になる山です。

宿から10分も歩くとそこにいかにも何かを採掘しているぞという感じのエリアが。
山から運んできた石をハンマーで砕(くだ)く人々。
こちらはセメントやコンクリートの資材になる石とのことでした。
大変そうな作業を見せていただきながら、写真も撮りつつ先へ進んでいると

「今、写真を撮ってたよね」

Tシャツ姿で声をかけてきたお兄さんですが、身分証にはセキュリティーの文字が。

「すぐそこに警察署があるからいっしょに来て」

・・・マジか~。
写真を撮っちゃダメパターンだったのね~と思いながらも、こうなったらもうついて行くしかありません。

Google Earthより

少し歩いた先に『Police office』の文字がかかれた建物(写真中央)がありまして、その近くの木陰の下に青い迷彩柄の軍服を着た方々が座っていらっしゃいました。
・・・これはヤバイやつだ。

「座れ」

まずは言われたとおりに行動します。
間違ってもすぐに自分からベラベラしゃべり出すことはしません。
身分証明書(旅中に外に出る際は常にコピーを持っておきます)を確認され、軽い質問があったあとにようやく

「なぜ写真を撮っていたんだ?」

という質問をされました。
ここでの第一声は

「I’m sorry.」
(ごめんなさい)

もちろんこのあとに写真を撮った理由をしっかり伝えますが、まずは謝る。
これが大事です。

「Arrest you.」
(逮捕する)

という言葉が聞こえるたびに精神ポイントが削られたわけですが、ただ今回はちょっとこれまで経験してきたケースと違う展開に。
(こんな経験は絶対にしない方が良いので、是非このブログを教科書としてご活用下さい)
私の話を真剣に聞いた上で、まずは写真を撮ったことを許してくれた警察官のサリームさん。
続いてイロイロと大事なことを教えてくれます。

Google Earthより
  • アジア人が一人でこのエリアに足を踏み入れるのは危ない。
  • シエラレオネの企業が所有する鉱山なので写真撮影を勝手にしてはダメ。
  • 許可がもらえるかもしれないというゲートは遠くにある。

そうだったのかぁと頷(うなず)くしかありません。

つまりこれは大人しく宿へ帰るしかないんだなと思ったところで

「『アジア人が一人では危ない』と言ったんだ」

・・・えっ?

「警備をつければいい」

それってつまり・・・

「ダイヤモンド採掘現場が見たいならオレがついていくがどうする?」

もちろんこれが非公式であることは間違いありません。
というより旅人がダイヤモンドの採掘現場に行く正式な方法などあるはずがないのでどんな手段でも見られたらそれでOK!
なので喜んでお願いすることにしました。
1時間25ドルで案内してくれるというので有難すぎます。

ダイヤモンド採掘現場へ

まさかの展開に驚きながらも、サリームさんと同行してダイヤモンドの採掘現場に向かいます。
さっきまでは緊張しかなかったわけですが、今はものすごく心強い味方です。

「どんどん撮っていいぞ!」

と写真も公認をもらったので撮らせていただきますよ〜!

そして歩くこと約10分。
草むらをかき分けて到着したのは小さな湖です。
何やら作業をしているような人の姿がチラホラ見えます。

「オレはここで待ってるからもっと近くで見てこい!」

というので、案内人のお兄さんと共にさらに奥へと進むと

ダイヤモンド採掘をする方を発見!
ちなみにまだ宿を出発してから1時間ちょいしか経っていません。
まさかこんなにスムーズにことが進むとは!!
(警察との一悶着はありましたが結果良ければ全て良し)

調べてみるとダイヤモンドの採掘の仕方は主に3つあるそうで、このザルを使って砂を洗い流しながらダイヤモンドを探す方法を

『パンニング』

というそうです。
手間が非常に大きく、採掘できる原石も非常に少ないということで、現代ではあまり用いられていないこのパンニングで行われるコイドゥのダイヤモンド採掘。

バケツいっぱいの砂をザルに入れて、そこからまず泥だけを手首のスナップを使って洗い流します。
続いて大きめの石を取り出し、中くらいの石も除いたらそこからは熟練の技でダイヤモンド探しがスタート。
振動の関係でザルの中心にダイヤモンドが集まるようで、手を動かしながら何度も確認をして・・・

「No.」
(無い)

ここまで2分。
これを何度も繰り返し行います。
そうして1日やるとダイヤモンドが1〜2粒見つかるそうで。
まぁそんなにバンバン見つかるものではないとは思っていましたが、こんなに大変なのかと。

コイドゥの山を削って取れた砂。
そのほとんどはタダ同然の砂ですが、その中に眠る極わずかな貴重な石を求めて黙々と探し続けるみなさん。
本当に根気がいる作業です。

見つかったダイヤモンドを見せてくれたおじさん。
手のひらに乗せてもらうと、小さいのに非常に重みを感じました。
人生で初めて見たダイヤモンドの原石。
作業の様子と併せて貴重なものを見せていただきました。
テンキー!!

「一人じゃ危なくて来れなかっただろ!?」

たしかに湖のまわりには地元のみなさんの生活エリアが広がっていて、ココに一人で来るべきではないというサリームさんの意見はごもっともでした。

「次来る時はまず警察署に来るんだ!」

一時はどうなることかとヒヤヒヤしたわけですが、最後には『次』という表現を使ってもらえて。
念願のダイヤモンド採掘現場を見るという目標も達成できて大満足な本日。

「Take care!」
(気をつけて旅を続けるんだぞ!)

去り際のサリームさんの言葉がいつまでもジーンと胸に響くのでした。

2 件のコメント

  • とてもハラハラしました。
    ダイヤモンドと言えば、スーパーマンが石をギュっと握りしめ、大きなダイヤが出来るシーンが頭に残っています。
    これから先も楽しみにしていますが、気をつけてください。

    • 本当に一時はハラハラしました。
      たまに警察とトラブルが起きるので今後も注意できるところはしていきたいと思います。
      ダイヤの原石、キラキラしてましたよ!

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