シエラレオネを旅する② チンパンジーに会いに行こう!〜タクガマチンパンジー保護区見学ツアー〜

2023年5月27日、天気くもり時々晴れ。

シエラレオネを旅する

久しぶりの西アフリカにテンションが上がり、結局5時間ほどノンストップで歩き回っていた昨日。
決して無茶をするつもりはないのですが、アフリカに来るとカラダが勝手に動いてしまいまして。
曇り空でもたっぷりと紫外線を浴びたおかげで顔は軽く焼け、ちょっと頭もボーッとするような感じがあるかなぁ〜なんて思い、今日は抑(おさ)えめにすることを決意!

したのですが、宿でのんびりという選択肢はありません。
要は歩かなければいいんだよな〜と今さっき決めたばかりのルールに解釈を加えまして、さぁではどうしようかと今日の旅のプランを練ります。
風の向くまま気の向くままに行動するのが旅の醍醐味です!

山の中にあるシエラレオネの首都フリータウン。
この街の移動にはバイクかトゥクトゥクが必須だということは昨日痛いほどよくわかりました。
トゥクトゥクの方が安く乗れますが、一人で自由に動きたい場合はバイク一択!
運賃は距離によって大体決まっていて、乗車前にドライバーさん確認すると教えてくれます。
長くてもフリータウン内なら30レオン(約180円)。
ものすごい山をバイクでかっ飛ばしてくれるので正直安すぎな気もしますが、地元のみなさんにとってもなくてはならない移動手段なのでこの値段なのだと思います。
外国人料金をふっかけられることもないので安心して乗れるフリータウンのバイクタクシー!
ただ、リスクが高い乗り物であることは事実です。

ドライバーのみなさんも決して事故を起こしたいわけではないので流しのバイクに乗っても問題はありませんが、やはり少しでも信頼できる方のバイクに乗りたいもの。
まぁ初見ではわからないのでとりあえず乗ってみるしかないわけですがね。
そんな中、今回フリータウン到着時に最初に乗せてもらったサイトスさんは完全に当たりのドライバーさんでした。
安全第一でとっても安心できるドライビングに加えて、走行中は私に気を遣ってくれる場面もあり。

「この人は信用できる!」

と思ったので電話番号を聞いておきました。
今日は少し遠くまで行きたかったので、さっそく連絡すると快くOKしてくれたサイトスさん。
宿まで迎えにきてくれた彼のバイクに乗ってフリータウン観光2日目がスタートです。

治安などについての最低限のことだけは調べますが、あとは現地に着いてから情報を集めるのが私の旅のスタイル。
先日シエラレオネに入国してから目に飛び込んできたのはこちらのポスターでした。
シエラレオネのナショナルアニマル(国獣)ということでコレは是非見ておきたいと思ったのでさっそく調べると、なんと有名な保護区がフリータウン近郊にあることが判明!
中心地から20kmほどのところにあるので、そこまで遠くもなく近くもないというビミョウな距離なので念のためにサイトスさんに行き帰りをお願いしたというわけです。
ですが

「こんな都市部にいるの!?」

というのが正直な気持ちで。
まぁ保護区だから動物園的な感じなのかなぁと思いながら、相変わらずの坂道をどんどん進んでいくと

私はまだフリータウンを知ったつもりでいただけでした。
山の奥へ進んでいくとどんどん緑が濃くなっていきます。
フリータウンが位置する半島の中央部は国立公園になっており、木々が生い茂る森林エリアには絶滅危惧種の動物も生息しているそうで、現在世界遺産登録に向けて動いているとのことです。

そんな緑の景色に見惚(と)れていると、急に横道に入り未舗装路をガンガン上っていくサイトスさん。

「バイクで行けるの!?」

と怖くなるレベルの坂を当然のように上っていきまして、なんとかしがみついていると

入口に到着!
かかった時間は約30分。
あっという間に来てしまったという感じで拍子抜けしてしまいますが、これがシエラレオネが世界に誇るチンパンジー保護区です。

タクガマチンパンジー保護区

フリータウンの郊外のウエスタンエリアペニンスラ国立公園内に位置するタクガマチンパンジー保護区は、自然保護活動家のバラ・アマラセカランと彼の妻シャルミラによって1995年に設立されました。
当初、野生生物法を施行し、絶滅の危機に瀕している孤児の西洋チンパンジーを救助し、リハビリするために設立されたタクガマは、多様な保護組織に成長しました。

参考:タクガマチンパンジー保護区Webページ

予約無しに突然やってきましたが、中に入ると他にもツアーに参加しにきた方がいてホッと一安心。
200レオンを支払い12時スタートのツアーに参加することに。
そしてここから始まったのは私が全く知らなかったチンパンジーの世界でした。
その前にチンパンジーの説明もしておきましょう。

チンパンジー

チンパンジーは、哺乳綱霊長目ヒト科チンパンジー属に分類される類人猿。

Wikipediaより

厳密にはさらに細かく分類されますが、チンパンジーは西から中央部に広がるアフリカの熱帯地域を中心に生息しています。
アフリカといえばライオンやゾウというのが一般的なイメージですが、霊長類もアフリカを代表する動物です。
以前ウガンダでマウンテンゴリラを見た時の興奮は忘れられず!
今回もチンパンジーが見れるぞ〜という軽い気持ちで来たんです。
が、しかし。
このあと私はチンパンジーを取り巻く問題について考えさせられることになります。

タクガマチンパンジー保護区の主な目的は、シエラレオネの野生生物法を施行し、救助されたチンパンジーに安全で自然な避難所を提供することです。
保護区に到着するほとんどのチンパンジーは5歳未満で、通常はまだ母親からミルクを授乳する時期になります。
多くのチンパンジーは飼い主から虐待をされていたり、負傷や栄養失調、障害のある状態でやってきます。
ペットとして違法に販売されたり、放置されたりしたチンパンジーです。

参考:タクガマチンパンジー保護区Webページ

順を追って説明していきますね。
DNAの98.6%が人間と同じというチンパンジー。
我々がかかる病気にも非常に敏感だそうで、人間と接触した可能性がある保護されたチンパンジーはまず検疫施設に入り健康な状態になるまでケアを受けます。
元々中にいるチンパンジーに病気を広げないための措置です。
その期間は最低3ヶ月。

その後第1段階のリハビリがスタート。
専門の知識を持ったスタッフの方が幼いチンパンジーの母親となって彼らを育てます。
一匹ずつの名前をちゃんと把握しているスタッフさん。
食事の時間には名前を呼びながら食べ物を投げ渡していました。
チンパンジーはちゃんと自分が呼ばれていることがわかるそうです。

本来は15から100の家族と共に暮らすチンパンジー。
しかしここに来る子たちはバラバラな環境下から集まるので、時間をかけて集団形成をしていく必要もあるそうです。
自然とリーダーも決まっていくそうで、みんなのリーダーになったチンパンジーは仲間を守る行動を取ります。
本日少し離れたところから彼らを見ていたら、なんと地面の石を拾ってコチラに向かって投げてきたんです。
ビックリしましたがネットがあったので大丈夫。
気分を悪くさせてゴメンね。

ちなみに人間に対して警戒心がある子もいるので大きな声を出したり手を振ったりするようなことをしてはいけません。
写真もフラッシュは禁止です。

それにしても元気な第1段階の子どもたち。
最年長で15歳という人間でも一番ヤンチャな時期なので、みんなとにかく動き回ります。
誰かが声を出すとそれに応じてみんなで一斉に盛り上がったり、仲良くしていると思ったら急にケンカのようなものが始まったり。
思わず見ていて笑ってしまうような本当に微笑ましい光景です。
が、忘れてはいけないこと。
彼らはここに保護されてきたんです。
では一体なぜ彼らは人間によってペットと化していたのか。
ツラい内容ですがここでまたタクガマチンパンジー保護区のWebページに書かれた内容を参考にして説明させていただきます。

母親や家族が違法なブッシュミートの取引や一方的な作為によって狩られた結果、残された幼いチンパンジーは密猟者によってペットとして売られています。
(ジェーン・グードル研究所の調査では、生き残ったチンパンジー1匹につき5〜10匹のチンパンジーが殺されていると公表しています)
サイズが小さい幼いチンパンジーはブッシュミートとしての価値が低いために殺すよりも生かす方が価値があるとされています。
タクガマに到着する全てのチンパンジーは、人間の暴力によって家族から分離された結果として何らかの精神的トラウマを負っており、さらに多くはショットガンなどによる身体的な傷も負っています。

参考:タクガマチンパンジー保護区Webページ

『ブッシュミート』とはつまり野生動物の食用の肉としてチンパンジーが取引されているという衝撃の事実。
実はこの問題はマダガスカルに生息するキツネザルにも同様の事態が起きています。
その他にも森林伐採や開発によって生息地が破壊され現在は絶滅危惧種に指定されているチンパンジー。

シエラレオネにかつて40000匹いたチンパンジーは5500匹にまで減っています。
そんなチンパンジーたちを保護し、最終的には野生に還すことを目指すタクガマチンパンジー保護区のスタッフさんたち。

リハビリは段階的に進みます。
木登りの仕方を習得したり、生活スキルを身につけたり。
何より大事なのは食料を自分で確保すること。
最初は一日に5〜6回与えていた食事も少しずつ回数が減らされていきます。
そうして徐々にスタッフの手から離れていくようにすることで、外の世界で生きる力を身につけさせることが大切なんです。

野生に還すといっても周囲の広大な国立公園に生活のフィールドが移行する形なので、チンパンジーたちにとっては安心できる環境なのかなと思います。
しかし、この森林も少しずつ減少しているそうで。

家を建てるための木材を手に入れるためや、新たな土地を開拓するための森林伐採が現在進行形で起きているとスタッフさんは言います。
反対の丘も以前は同じようた緑の木々でいっぱいだったとのことです。
この事態を止めるためにもウエスタンエリアペニンスラ国立公園を世界遺産に登録したいという政府の狙いがあるのかもしれません。

かなり重い話になりました。
私もここに来るまで全く知らなかったシエラレオネのみならずアフリカのチンパンジーが置かれている状況。
こうして実際にチンパンジーに会うことができたおかげで、それを考えるキッカケができたのは本当に良かったなと思います。
やはり

『知る』

というのは大切なことだなと。
とってもかわいくて愛らしい姿を見せてくれたチンパンジーたち。
人間と動物たちがお互い幸せに共存できる世界が実現できるようになるためには一体どうすればいいのか。
解決策がパッと浮かぶわけがありませんが、この問題に関心を持ち続けることが今の私にできることなのかなと思います。

イロイロ考えることはありましたが、総じてチンパンジーのことがよーく知れて、さらにかなり近くでその様子を見ることもできて大満足なタクガマチンパンジー保護区でした。
これでアフリカではゴリラとチンパンジーに出会えたので、あと残す霊長類はガボンのマンドリルとコンゴ民主共和国に生息するボノボ!
こちらも是非一度会いにいきたいと思います。
ということで、1時間のツアーが終了するのを待っていてくれたサイトスさんのバイクに乗ってチンパンジーたちのいる保護区にお別れです。
アフリカの動物のことがまた一つ好きになった1日でした。

みんな〜、元気でねー!!

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