ソマリランド(ソマリア)を旅する⑤ 洞窟壁画「ラース・ゲール」〜護衛と行く7000年前の遺跡観光ツアー〜

2019年8月10日、天気晴れ。

ソマリランドを旅する

ホテル Oriental Hotel

今回ハルゲイサでお世話になっているホテルOriental Hotel。昨日も書きましたが1泊朝食込みで15USドルというとんでもなくリーズナブルなこちらのホテル。本当は他のホテルにも足を運んでみようかなぁ〜なんて思っていたのですが、まぁとにかく居心地が良すぎるのでハルゲイサでの4日間は全てこちらのホテルに滞在することにしました。

1回のフロアはレストランになっているので夕飯もここで済ませることができます。しかも美味しくてこちらも安い!5USドルほどでボリューミーな肉料理が食べられます。

何よりこのホテルの良いところは、ここでソマリランドを巡るツアーを手配してくれるところなんです!管理人さんに行きたい場所を伝えれば車の予約から全てやってくれます。値段もちゃんと決まっていて、ツアー内容についてもわかりやすく説明してくれるので安心してお願いすることができるのも◎。

ということで、本日はホテルのツアーに参加!ソマリランドの数少ない観光名所「ラース・ゲール」という場所へ行くことにしました。敷地内に入るための許可証の取得に25USドル。そして、車とドライバーの手配に加えて、今回はついに護衛(ごえい)さんが必要とのことで、そちらの手配も含めて130USドル。合わせて料金は155USドルです。

8時に出発だよ!と言われていたのでゆっくりと朝ごはんを食べていたら、もう準備はできてるぞ!とアフリカでは珍しい5分前行動パターンでして。管理人さんのすばらしい手配ぶりに感動しながら、いってきますを伝えて車に乗り込みます。

今日も向かうのは昨日と同じベルベラ方面。同じ道を走るのでもう慣れたものです!と言いたいところですが、今日はそこに護衛さんがいるというシチュエーション。なんとも違和感を感じます。

ちなみに、ソマリランドの観光地に訪問する際は正式にはエリトリアと同様で事前に観光省的な所に行って許可証をもらわなくてはいけないそうなのですが、今回は直接現地に向かうことに。大丈夫なのか?と思いましたが、ホテルの管理人さんが言うので問題ないのでしょう。そして、こういう良い意味でのルーズさにソマリランドの治安の良さがうかがえました。

ベルベラへ向かう道の途中を左折すると道はオフロードに!国境からのハードなドライブを思い出す懐かしい景色に、少し嬉しくなる感覚を抱く自分に気づきます。すっかりソマリランドにそまってきているなぁと。

そしてこの道中、景色以上に印象に残ったのは私が乗っている車を見つけるとかけ寄ってくる子どもたちの姿でした。食べ物を求めてくるわけですが、私は何もあげられるものは持ってないので後部座席でその姿を見てるだけです。が、ここで動いたのはドライバーさん!ビスケットが入った袋を窓の外に放り投げてその子に渡すんです。時には、「あっちにいる弟にも渡すんだ!」と指をさして伝えながら2つポイっと投げることも。なんとも心が温まる行動でした。街に出て食べ物を買うことが難しい環境下にある子どもたちのことをちゃんと考えて、事前にビスケットを大量に買いだめしていたドライバーさん。運転で稼いだお金の一部をこうして子どもたちのために使うという支え合いや思いやりの姿勢にただただ感動しました。

そんなこんなで荒野を進むこと30分。何もないということがこれほど絶景になるのも面白いなぁと思いながら進んでいると突如(とつじょ)現れた岩山。ここがラース・ゲールと呼ばれる場所です。

ラース・ゲール

ラース・ゲール(ラス・ケール、ソマリ語: Laas Geel, Laas Gaal)はソマリランド首都ハルゲイサの近郊農村地帯にある洞窟。紀元前5千年頃のものと見られる洞窟壁画がある。2002年に発見された。ラース・ゲールの洞窟は花崗岩質であり、内部には新石器時代の壁画がある空間が約10ある。この洞窟壁画の保存状態の良さは、アフリカ全体でも有数のものであり、輪郭や着色もきれいに残っている。その絵は洞窟の天井に描かれており、当時の住民が手を伸ばして描いたものと思われる。もっとも多いのは、大きな角を持った牛の絵である。人が着飾られた牛を引いている絵もあり、牛の首には胸当てのようなものが付けられている。牛以外にも、飼い犬やキリンを表したと思われる絵もある。ラース・ゲールはソマリア語で「ラクダの水飲み場」を意味する。この壁画の存在はソマリ族の間では数世紀前から知られていたが、当時その情報が国際社会に伝わることはなかった。(後略)【Wikipediaより】

まず、その壁画を見る前に、ココが発見された年にビックリしました。2002年!つい最近なんです!!発見するまでに時間がかかったんでしょ!?と思われるかもしれませんが、この壁画が描かれたと考えられている時代は紀元前5000年。つまり7000年もの間、世間に存在が知られていなかったというものすごい遺跡(いせき)なんです。こんなことがあるんだと。ここにもソマリアという国がたどってきた戦乱の歴史を感じると共に、この遺跡の発見が今後のソマリランドやソマリアにとって大きな財産(観光資源)になることを期待したいところです。

長らく発見されなかったが故(ゆえ)に、その壁画の状態の良さは一目瞭然(いちもくりょうぜん)!私は考古学の「こ」の字も知らないド素人(しろうと)ですが、そんな私にだってわかるこの壁画の素晴らしさ!!昨日描(か)いたんですか?なんて言ったら怒られますが、それくらいハッキリと残っているんです。

天井一面にブワーっと広がる壁画。予想以上の迫力に感動が止まりません。

この壁画。当時の人は何千年後に歴史的な価値がある遺産(いさん)になるなんてことを考えながら描いたわけでもなく。言ってしまえばただのラクガキです。その時見えたモノや経験したコトを自分たちの生活するエリアに描いたという非常にシンプルな動機で生まれたラクガキが後の世で価値のある芸術に。

まさか7000年後に残っているなんて全く想像もしなかっただろうなと。それがこうして発見されて、アフリカのソマリアとは無縁(むえん)だった私がこの壁画と出会えたこと。なんかすごく神秘的なものを感じます。

壁画が描かれた洞窟(どうくつ)からの眺めがこれまた絶景。当時の人々が生活をした場所ということで、壁画が描かれる場所は山の上にあることが多いです。日差しや風から自分たちの身を守ることができるのと同時に、下界に住む野生動物や水資源である川がよく見えるので、生きるためのライフラインが確保しやすかったわけです。

この眺めは7000年前とはさほど変わっていないのでは?と思うと、タイムスリップしたような感覚になります。

護衛さんといっしょに巡ったラース・ゲールでしたが、危険を感じることは一瞬たりともありませんでした。強(し)いて言うなら、サンダルだと少し歩きづらくて危なかったぐらいですかね。そして護衛さんはガイドとしても活躍してくれました。英語が話せない方だったので指差しとジェスチャーでの説明でしたが、私に壁画を見せようと動き回ってくれて本当に嬉しかったです。シュクラン!!

ラース・ゲール自体はそこまで広くないので1時間もあれば十分壁画と景色を堪能(たんのう)できます。ハルゲイサから往復4時間ほどのツアーでした。

ということで、午後は久しぶりにホテルでゆっくりすることに。ふと考えると、いつの間にかソマリランドに安心しきっている自分自身に我ながら驚かされます。国境で1日足止めをくらったあの日がもう遠い過去です。ソマリランドの首都とはいったいどんな物騒なところなんだろうか!?とビビっていた日本で旅の計画を立てていた1ヶ月前ははるか昔。百聞は一見にしかず!この言葉の意味をこれほど深く感じたことはこれまでなかったなと思います。外の世界からは見えなかったソマリランドという国の姿をこの目で見た5日間。もちろんそれはほんの一部で、この国の本質には全く触(ふ)れてはいないことは十分わかっています。が、これからニュース等で「ソマリア」という言葉を聞く時、私はこのソマリランドでの経験を思い出します。来てよかった。今は本当にそう思います。百聞は一見にしかずです!

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