マリを旅する⑤ 西アフリカの伝統文化 〜布(藍染・ボゴラン)/仮面/銀細工〜

2023年6月12日、天気晴れ。

マリを旅する

「ビザが取れたらいいな!」

くらいの軽い気持ちで日本にあるマリ大使館へ行き、予想に反してあまりにスムーズにビザを発行していただき肩透かしを喰らった2ヶ月前。
もちろん嬉しかったわけですが、この時からマリ渡航に対する少なからずの緊張感があったのも事実で。

「危険な区域への移動は避けてください」

ビザを受け取る際に大使館のスタッフさんからいただいた忠告です。
行っていいけど気をつけて!
というこのなんとも言えない感じが私の中のマリという国への印象をさらに複雑にしまして。
それでも最後に勝つのはやはり未知なる国を自分の目で見てみたいという好奇心。
これだけは抑えることができません。
ということで期待と不安を抱いてマリにやって来たのが5日前です。
空港でたまたま出会った方との縁を信じて、ガイド付きのツアーで巡った今回のマリの旅。
結果的に非常に充実した時間を過ごすことができて本当にラッキーでした。
何より危険レベル4の国を安心安全に旅ができたことに感謝!
やはり旅(人生)を作るのは人との出会いです。

幸運な出会いはもう一つ。
なにかと不安の多いアフリカ旅では安心できる場所の確保が精神衛生上とっても大切になります。
要は良い宿に泊まりたいわけですが、こればかりはもう実際に泊まって確かめるしか方法はなく。
治安の関係で現在は旅行者が激減しているマリですが、西アフリカの観光大国としてのポテンシャルは十分にあり、検索すればオシャレなホテルも出てきます。
ただ当然お値段はお高めです。
旅を長く続けるためにもここはできるだけ安い宿を見つけたいところですが、だからといって口コミも何もない所に泊まるのはかなりリスキー。
なのでBooking.comで出てきた首都バマコで一番安いホテルを予約しました。
が、空港のタクシードライバーに聞いてもそんなホテルは知らないよという反応で。

「これはマズイ所を選んでしまったか~!?」

と思っていたのですが、このホテル選びが吉と出たんです。

空港から車で15分ほどの場所にあるホテルIMMEUBLE KCF
1泊3000円ほどとこのエリアでは最安値なのであまり期待をせずにやって来たのですが、部屋は広々&清潔でエアコンもバッチリ効き、まさかのWi-Fiも使用可!
これだけでもう十分すぎるのですが、お湯が出るシャワーまでありまして・・・完璧だよ~!!
さらにホテルの1階にはコンビニがあり、無闇に外出することなく買い物ができるのも嬉しいポイントです。
私のカタコトのフランス語をちゃんと理解しようとしてくれる親切なスタッフのお兄さんたちの存在も温かくて、あまりの居心地の良さに結局首都バマコではずっとこのホテルにお世話になりました。
残念ながらお兄さんたちといっしょに撮った写真のデータは失ってしまいましたが、あのやさしい笑顔は決して忘れません。
メルシーボークー!!

イブラヒムさんのFacebookより

そんな良い縁に恵まれたおかげでとっても幸せな気持ちで迎えたマリ滞在最終日。
ツアーは昨日で全て終了したので今日の予定はフリー。
マリ出国は明朝1時なのでホテルでギリギリまでのんびりするかな~と思っていたのですが、そこにガイドのイブラヒムさんから連絡が。
なんと最終日の今日も無償でガイドをしてくれるというのです。

「空港まで君を無事に連れて行くのが僕たちの仕事だよ」

嬉しすぎる心遣いにただただ感謝。
お言葉に甘えてホテルまで迎えに来てくれた彼の車に乗り込んで向かうのは初日にも訪れた首都バマコのマーケットです。

Google Mapsより

バマコのグランドモスクの周辺にブワーッと広がるマーケット。
常時ものすごい数の人が行き交います。
比較的整ったマーケットなので歩きやすくはありますが、すれ違う人との距離がかなり近いのでスリ等には十分注意が必要です。
そんな人混みの中をどんどん進んでいくイブラヒムさん。
見失わないように頑張ってあとを追いながらも気になるのはお店に並ぶ商品たちです。
西アフリカの文化の中心地であるマリ。
他のエリアとは一線を画す『西のカルチャー』がバマコのマーケットにはギュッと詰まっています。
では、ここで改めて西アフリカの魅力的な文化を少しずつですがご紹介です!

西アフリカの布文化

Google Mapsより

最近は日本でも益々人気が高まってきているアフリカ布。
独特の色鮮やかなデザインは見ているだけで気分が上がる魔法の布です。
そんなアフリカ布を使った服などを製作販売するブランドがどんどん増えてきている今日この頃。
私もアフリカ布が好きなのでこの傾向は非常に喜ばしいことなのですが、残念なコトがひと~つ!

「もっと西アフリカの布にも注目して~!!」

今、多くの方がイメージする『ワックスプリントでカラフルに仕上げられた布』がザ・アフリカ布であることは事実です。
工場で大量生産ができるというのがアフリカ大陸全体(サハラ砂漠よりも南の国々)でも広く流通している最大の要因かと思います。
が、だからこそ注目したいのが綿花の栽培が盛んな西アフリカで今も手作業で作られる伝統的なアフリカ布たち!

藍染め

Maison Laadaniより

日本人にも馴染み深い藍染(インディゴ)は、人類最古の染料の一つとして、アフリカ・アジア・アメリカなど世界中で愛されてきました。
中でもアフリカンインディゴは世界の藍染の起源とも言われるほど、長い歴史を持ちます。
藍染はアフリカの各地で行われていますが、特に西アフリカでは、地域・民族ごとに様々な技法を用いて、盛んに行われてきました。
そのため一口にアフリカンインディゴといっても、濃淡や色味、模様など多種多様な藍染布があります。

セヌフォ堂ホームページより
Maison Laadaniより

どこか懐かしい気持ちにさせられる藍(あい)染め。
インディゴという色は世界共通で愛される色ですが、そこにアフリカならではの模様がミックスされることで古き伝統が『新しいモノ』として見えてくるのが不思議です。

泥染め(ボゴランフィニ)

ムトゥンガより

ボゴランフィニまたはボゴランは、伝統的に発酵泥で染められた手作りのマリ綿生地です。
伝統的なマリ文化において重要な位置を占めており、最近ではマリの文化的アイデンティティの象徴となっています。
布は、ファッション、美術、装飾で使用するために世界中に輸出されています。
染料技術はいくつかのマリの民族グループに関連していますが、バンバラ族のものはマリ国外で最もよく知られるようになりました。バンバラ語でボゴは「泥」、ランは「~で作られる」、フィニは「布」を意味します。

Wikipediaより
SIBY Tourismeより

藍染めもステキですが、個人的にはもうこの布がドストライク!!
泥を使って染め上げたアフリカ布、ボゴラン。
カラフルとは真逆の限られた渋めの色のみで構成される布が他にはない唯一無二の個性を放ちまして。
文化への強い誇りを感じる西アフリカの泥染めです。
ブルキナファソではボゴラン体験をさせていただき、制作工程や職人のみなさんの想いに触れ、その魅力に思いっきりハマってしまいました。
そんなボゴランの発祥の地がマリ!
ニジェール川が運んでくる良質な泥によって生み出されるのがボゴランです。

SIBY Tourismeより

こちらはシビの街で見つけたボゴランのポーチ。
泥染めは西アフリカのマーケットで見かけることはありますが、マリには他の国では見ない服や帽子などのアイテムがあるので感動が止まらず。
旅先では荷物を増やしたくないので極力お土産を買わない私ですが、コレは我慢できませんでした。
選びきれずに2つ買っちゃいましたからね。

SIBY Tourismeより

そして驚くことなかれ。
シビの街で唯一のボゴラン職人として小さな工房で活動されているのがまさかのイブラヒムさんのお兄さんなんです!
観光ホームページにもバッチリ彼の写真が載っていました。

Google Mapsより

藍染め&泥染め以外にも、ギニアビサウで見つけた蛍光色の布や、ブルキナファソのやさしい色合いの綿織物など、まだまだ紹介したい西アフリカの布の世界。
国や地域によって本当に様々な種類があるので、一度入り込むと抜け出せなくなるかもです。

西アフリカの仮面文化

Google Mapsより

「アフリカといえば!」

の工芸品に仮面(マスク)があります。
少なくとも3000の民族が存在しているといわれている広大な大陸アフリカ。
国という単位は植民地の時代にヨーロッパの列強各国によって無理矢理分断されたものであり、一つの国の中にも多様な民族が暮らしています。
そんな各民族を象徴するのが『仮面』です。

東京かんかんより

アフリカの中でも早くから王国が繁栄した長い歴史をもつ西アフリカ。
そのため民族の伝統的な儀式やお祭りが今も残る国や地域が他のエリアと比べると多く存在します。
その祭事にも登場するのが仮面をつけた化身たち。
木彫りの仮面は現在は広くアフリカ全土のお土産屋さんで見ることができますが、そのルーツの多くは西アフリカなんです。

Google Mapsより

首都バマコにある国立博物館。
ここには先ほど紹介したアフリカ布や数多くの民族の仮面が展示されています。
まさに西アフリカの文化を感じるにはもってこいの場所です!
ただ、館内の写真撮影はNG。
造形や細部の装飾が面白い仮面が数多く並んでいたのですが、お見せすることができないのが残念です。
ネットで「Mali」「Mask」で調べると画像がたーくさん出てくるので是非チェックしてみて下さい。

チワラ

Google Mapsより

ここでは一つだけ皆さんに紹介したいと思います。
マリに数多く存在する仮面ですが、その中で最も有名なものがこの仮面です。
その名は

「チワラ」

マリの主要民族であるバンバラ族の仮面です。
モデルはバンバラ族の神話で農耕を司る神カモシカ(ローンアンテロープ)。
このチワラが現在はマリのシンボルになっていて、街を歩いているとあちこちでそのデザインを見かけます。

発給されたビザに貼られていた収入印紙にもチワラ!
マリの人々にとって大切な仮面であることがよくわかります。
マーケットに行けばチワラの仮面はどこの店にもまずあるので、お土産に是非!!
・・・と気軽にオススメできないのがアフリカの仮面なんです。
なんせデカイので。

「仮面はほしいけど大きすぎるのはちょっと・・・」

さぁどうしたものかとなりますが、そんな要望を叶える方法があるんです。
要は小さくしてもらえば問題は解決!
マーケットには職人さんは数え切れないほどいるので、良さげな人にお願いして作ってもらえばOKです。
ギニアでは豊穣の女神ニンバの仮面を作ってもらいました。

しかし、このオーダーメイドにはイロイロと注意が必要でして・・・
特に①職人としての腕があるかと②信頼できる人柄かを見極めることが大切です。
まぁこればかりは運もあるので、出会った人との縁を信じてあまり期待せずに完成を待つのがいいかもしれません。
お金だけ取られる可能性を事前に考慮しておけばショックも少なく済みます。
そして期待していない分だけできあがりのクオリティーが高い時の喜びは倍増!
仮面のみならず様々なものがオーダーメイドできるのはアフリカのマーケットの楽しみです。

西アフリカの銀文化

Google Mapsより

そんなオーダーメイドで仮面を小さくする方法がもう一つ。
それが

『銀の指輪にしてもらう』

というものです。
鍛冶職人が多い西アフリカだからできる方法になります。
その昔、「黄金の王国」と呼ばれていたのがここら辺一帯を支配していたマリ帝国。
大量に産出される金で各地と交易を行い栄えました。
それは決して過去だけの話ではなく、今でも金が採れるマリ。
マーケットに金でできた細工が並ぶのはこの国ならではの光景かもしれません。
木工職人以上に鍛冶職人が多いのがバマコのグランドマーケット。
なのでここで金の指輪を作ってもらうというのも手ですが・・・
懐(ふところ)にそんな余裕の無い方は銀でオーダメイドを依頼して下さい。

木工よりも細かな装飾ができるのが金属細工の良い点です。
実は先日マーケットに来たときに既に制作を依頼していたチワラのシルバーリング。
イブラヒムさんの友人で確かな腕があるそうなので信頼をしまして。
今日が約束の受渡日。
出国まで12時間を切っているのでもし

「もうちょっと時間をくれ」

なんて言われたらもう諦(あきら)めるしかないなぁ~と思いながら彼のお店を訪れると

チワラーーーーーーーー!!
求めていた完璧なデザインにもう大興奮。
最高の職人技で作っていただいた一点物です。
いやー、すごい!!
良い仕事をしてくれたので言い値にチップも加えてお礼をします。

「イニチェ!」
(バンバラ語で「ありがとう」)

ちなみにマーケットでは指輪だけでなくチャームやブレスレットなど、様々な銀細工を作る様子を見ることができます。
強面(こわもて)の職人さんばかりなので少し緊張しますが、作業に集中するみなさんの真剣なまなざしに熱いモノを感じるバマコのシルバーマーケットです。

Google Mapsより

ということでマーケットで西アフリカの風を思いっきり感じた本日。
見るもの全てに目を奪われ、人々の熱気に興奮が高まり、歩いているだけで本当に楽しいバマコのグランドマーケットでした。
ブードゥー教と呼ばれる西アフリカの一部で信仰されている宗教で使う動物のミイラが並ぶお店なんかもあったのですが、それはまた別の機会に詳しくご紹介したいと思います。

気がつけばいつの間にか夕日が沈み、辺りはだんだん暗くなり。
マリの旅の終わりを実感し始めると共に込み上げてくる別れの寂しさ。
露店でコーヒーを飲みながらイブラヒムさんと最後の時間を過ごします。
彼のおかげでこの国を心の底から楽しむことができました。
まだまだ行きたい場所がたくさんあるマリ。
もっとイロイロ見てみたいわけですが、そう思えるのもイブラヒムさんが最高の時間を私にプレゼントしてくれたからです。
もう一度マリに来る時にはまたイブラヒムさんにガイドをお願いすることを約束して、さよならを告げたところでタクシーに乗車。
彼と旅した5日間の思い出に浸(ひた)りながら空港へと向かうのでした。

「イニチェ!」

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